アクロス福岡 チョン・ミョンフン プロジェクト in アクロス福岡
プロジェクト概要
イベント案内

チョン・ミン


キャスリーン・キム


アルフレッド・キム

6月3日(日) 15:00開演
チョン・ミョンフン推薦による若い演奏家と九州交響楽団の饗宴
※こちらの公演は終了致しました。
メトロポリタン・オペラ、ウィーン国立歌劇場で活躍する期待の歌手たち!!
[会 場]
福岡シンフォニーホール
[出 演]
指揮:チョン・ミン
ソプラノ:キャスリーン・キム
テノール:アルフレッド・キム
[曲 目]
マーラー:交響曲 第1番「巨人」
ヴェルディ:歌劇「運命の力」序曲
ヴェルディ:歌劇「リゴレット」より
ヴェルディ:歌劇「椿姫」より
[入場料]
S席 3,000円 / A席 2,000円 (学生券 1,000円)
■公演を終えて
 ついに始まった「チョン・ミョンフン プロジェクト in アクロス福岡2012」。その第1弾として行われたのが、チョン・ミョンフンの第3子で指揮者として活動をしているチョン・ミンと、韓国出身でヨーロッパ、アメリカで歌手として活躍しているキャスリーン・キム(ソプラノ)、アルフレッド・キム(テノール)が九州交響楽団と共演する演奏会だ。前半のプログラムは、ヴェルディの中期の傑作「運命の力」序曲に始まり、「椿姫」の第1幕のヴィオレッタのアリア、「リゴレット」のマントヴァ公のアリアなどが歌われた。メトロポリタン歌劇場(ニューヨーク)、ウィーン国立歌劇場などで活躍するふたりの若手の歌声は、フレッシュ、かつ、伸びやかで、贅沢な気分を味わえた。
 後半のプログラムはマーラーの交響曲第1番「巨人」。作品自体が、作曲家の若さを感じさせるものだが、チョン・ミンの指揮は音楽そのものの息吹を新鮮に表現した。九州交響楽団もその指揮に応えて、最終楽章ではダイナミックな音作りに成功していた。こうした若手指揮者との共演の中で、オーケストラも新しいエネルギーを得るということもあるだろう。今後も楽しみになる演奏だった。
レポート/片桐卓也(音楽ジャーナリスト)

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アクロス・ユース・オーケストラ

7月31日(火) 19:00開演
チョン・ミョンフン&青少年オーケストラとの共演
※こちらの公演は終了致しました。
世界的指揮者チョン・ミョンフンが青少年オーケストラと登場!!
[会 場]
福岡シンフォニーホール
[出 演]
指揮:チョン・ミョンフン
管弦楽:アクロス・ユース・オーケストラ
[曲 目]
ドヴォルザーク:交響曲 第9番 ホ短調 「新世界より」 ほか
[入場料]
全席自由席 一般 1,000円 / 学生 500円
■公演を終えて
 7月末にはチョン・ミョンフンが来福。3日間に渡り、高校生、大学生を中心とする若者たちのオーケストラを指導し、演奏会に臨んだ。リハーサルでの音楽作りも非常に興味深いものだったが、7月31日に行なわれた演奏会は、本当に力演だった。
 前半はオーケストラの中核となった福岡市立福岡西陵高等学校管弦楽部の演奏により、ジョン・ウィリアムズの組曲「スター・ウォーズ」から第5曲「王座の間とエンド・タイトル」が松田和宏(福岡西陵高等学校管弦楽部顧問)の指揮により演奏された。堂々とした音楽作りは、このオーケストラの実力をよく教えてくれるものだった。
 後半はリハーサルを重ねてきたドヴォルザークの交響曲第9番「新世界より」。コンサートマスターに岡本弦也(九大フィルハーモニーオーケストラなどで活動)を迎え、大学オケで活動するメンバーも加えた編成である。豊かなメロディに溢れているが、意外に難しい部分も多い「新世界より」。ひたむきにその作品に向かう若者たち、そして、リハーサルの時よりもさらに自在に音楽を動かそうとする指揮者の想いがひとつになって、感動的なクライマックスを迎えた。客席に向かって「もっとブラボーを」とチョンさんが求めるシーンがとても印象的だった。
レポート/片桐卓也(音楽ジャーナリスト)

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アジア・フィルハーモニー管弦楽団

8月1日(水) 19:00開演
チョン・ミョンフン指揮 アジア・フィルハーモニー管弦楽団
※こちらの公演は終了致しました。
世界で活躍する日中韓の奏者が一堂に終結するドリームオーケストラ!
[会 場]
福岡シンフォニーホール
[出 演]
指揮:チョン・ミョンフン
管弦楽:アジア・フィルハーモニー管弦楽団
[曲 目]
シューベルト:交響曲 第7番「未完成」
ベートーヴェン:交響曲 第3番「英雄」
[入場料]
S席 7,000円 / A席 5,000円 / B席 3,000円 (学生券 1,500円)
■公演を終えて
 青少年オーケストラの演奏会の翌日8月1日には、アジア・フィルハーモニー管弦楽団の演奏会がチョン・ミョンフン指揮で行なわれた。アジア・フィルもやはり7月29日からリハーサルを行い、今回のツアーの演奏会に備えたのである。
 アジアのオーケストラで活躍するメンバー、そして欧米の一流オーケストラで活躍するアジア系のメンバーを集めた多国籍オーケストラの音は、さすがに迫力がある(コンサートマスターは、フランス国立放送フィル、ソウル・フィルのコンサートマスターとしても活躍するスヴェトリン・ルセフが担当)。リハーサルで練られたアンサンブルが、本番の演奏会ではさらに深みのある音楽を作り出していた。
 その演奏会だが、前半にシューベルトの「未完成」、後半にはベートーヴェンの交響曲第3番「英雄」が演奏された。「未完成」では、特に第2楽章の音楽の表情の変化、木管楽器の美しいソロなどが印象に残った。後半の「英雄」は、作品の持つスケールの大きさを実感させてくれる演奏。ただし、力んだ大袈裟な音楽作りはまったくなく、自然に流れ始める音楽がジワジワと心に迫ってくるような、チョン・ミョンフンらしい感動的な演奏だった。
レポート/片桐卓也(音楽ジャーナリスト)

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2012年の公演を終えて
 個人的な希望として、チョン・ミョンフンがリハーサルする青少年オーケストラを見てみたかった。もともと若い世代に音楽を伝えることに熱意を持つチョン・ミョンフン。それは何度かの取材を通して、よく分かっていた。それだからこそ、その実際のリハーサル現場を見たかったのだ。
 そして、今回の3日間の青少年オーケストラ、また、アジア・フィルのリハーサルを通して感じたのは、音楽作りに真剣に向き合う若者たちの姿勢と、たくさんの人間(時に100人以上)が参加するオーケストラが、ひとつの生命体のように輝き始める瞬間の美しさだった。
 青少年オーケストラでのリハーサルで、チョン・ミョンフンはまず、非常にシンプルだけれど、難しい質問をメンバーに投げ掛けた。「音はどこから来るのか?」 その答えはもしかすると音楽家にとって永遠のテーマともなり得るものだろう。チョン・ミョンフンいわく「音はひとりひとりの心の中から生まれてくる」のだ。そしてそれはオーケストラという音の塊となり、作曲家が楽譜に込めたメッセージを伝えるエネルギーとなって行く。その情熱をひとりひとりから引き出す過程、それがチョン・ミョンフンにとってのリハーサルの意味だったようだ。
 弦楽器の音の出し方ひとつでも、「強い音を出す時には、楽器を叩くのではなく、その楽器の中の音を掴んで外に引き出すような感じで」とか、「この部分で必要な音は、こんな感じ。この音を必ず覚えておくように」とか、非常に面白いリハーサルを繰り返していた。音楽的な要求度も非常に難しいレベル。しかし、松田和宏による事前の準備がよくしてあって、若者がチョン・ミョンフンの指示によく付いてくる。チョン・ミョンフンも「エクセレント!」という言葉を何度も発していた。指揮者を目指す若い音楽家なども、このリハーサルから学ぶことが多いだろうと思った。
 同じことが、一流演奏家の集まるアジア・フィルハーモニー管弦楽団でも言える。アクロス福岡での翌日には東京サントリーホールで、その後韓国(ソウル)でも演奏会を行なったチョン・ミョンフン&アジア・フィルだが、リハーサルの時間を含め、福岡に滞在しての音楽作りは、オーケストラのメンバーにとっても充実した時間になったのではないだろうか。こうした環境を準備できる公共ホールはなかなか無いだろう。
 そして、そのリハーサルの過程では、オーケストラに対して、長々と話し込むチョン・ミョンフンの姿が見られた。アジア・フィルの意義、あるいは作品についての想いなどを、リハーサル途中で急に思いついたように話し始めるのだという。しかし、通常のオーケストラの定期演奏会のリハーサルなどでは経験できない、貴重な時間がそこには流れているはず。世界各地から集まった多国籍な演奏家が、そうしたリハーサルを通して、次第に心を通わせて行く瞬間が感じられた。
 また青少年オーケストラのリハーサルを見学していたティンパニ奏者(アドリアン・ペルッションAdrien Perruchon)が、そのリハーサル中に突然、打楽器奏者たちを指導し始めるなど、とても素敵な光景に出会うことができた。それこそ、まさにチョン・イズムを体現する、アジア・フィルのメンバーならではの行動なのだろう。次回の公演でも、ぜひリハーサルから見学したいと思った。

レポート/片桐卓也(音楽ジャーナリスト)