#9 若松駅 JR九州
明治時代から
石炭積出駅として発展
今は大都市の静かな駅
地球に優しい新型電車が発着
北九州市若松区にある若松駅は、筑豊本線(若松駅-原田駅)の起点駅。明治時代から筑豊炭田で採掘された石炭輸送の積み出し駅として発展してきた。筑豊興業鉄道の駅として1891年に開業し、1897年に九州鉄道、1907年に国鉄駅として変遷。1982年に取り扱いが終了するまで日本一の貨物積み出し駅として、東西3kmにおよぶ機関区や操車場が隣接。多くの人たちが携わっていた。この広大な跡地は、駅前広場から続くマンションや団地が立ち並ぶ住宅地になっている。1984年に建て替えられた駅舎内には、名物かしわめし弁当でおなじみ東筑軒が営む立ち食いうどん屋が。うどん・そばにはかしわが入り、名物弁当の購入もできる。駅員は午前6時30分から8時30分までしか常駐しておらず、朝夕の通勤・通学時間以外は閑散としている。1面2線の、長いホームは華やかな頃の栄華を偲ぶ。線路は行き止まり式で、終着駅らしい趣がある。
1929年に全通した筑豊本線は、今では事実上3つの路線に分かれている。鹿児島本線-篠栗線-筑豊本線を結び電化区間の"福北ゆたか線"が主要線で、若松-折尾間"若松線"、桂川-原田間"原田線"の2つは非電化で支線の印象がある。若松線には2016年からディーゼルカーに代わり、蓄電池電車・DENCHA デンチャが投入され、現在1日上下40本が若松駅と直方駅を結んでいる。折尾-直方間の架線がある区間を走りながら充電し、若松線をモーターで走行する、環境に優しい新型電車だ。
駅から徒歩約10分、1919年建築の旧古河鉱業若松ビルは国の登録有形文化財だ。かつて日本一の石炭積出港として賑わった若松を象徴する煉瓦造りの建物で、赤い若戸大橋とのコントラストが美しい。すぐ近くには、洞海湾を挟む戸畑を3分で結ぶ若戸渡船乗り場がある。また、車で10分ほど行くと、標高124mの高塔山公園。展望台からは、若松駅のホームに発着するDENCHAも遠望でき、若戸大橋と工場群のほか、南に皿倉山、北に響灘を望むことができ、夜景のスポットとしても知られている。
(文・写真 東 淳二郎)
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