#23 折尾駅/JR九州
日本初の
立体交差駅に終止符
駅の大改造が進む
モダン駅と昭和のコントラスト
北九州市八幡西区にある折尾駅は、鹿児島本線、筑豊本線(若松線・福北ゆたか線)の列車が1日400本近く発着する鉄道の要衝だ。1891年に九州鉄道と筑豊興業鉄道の駅として開業し、1895年2社共同、日本初の立体交差駅に。国鉄移管後の1916年に木造2階建ての旧駅舎が完成。長年、門司港駅と並ぶ美しい佇まいの駅舎として知られ、駅舎内の煉瓦造りの通路、木製の円柱・円形ベンチはシンボルだった。だが、2012年に解体され、感謝イベント”ありがとう折尾駅舎”には名残を惜しみ多数の人々が訪れた。折尾駅の乗降客は1日3万人以上で、JR九州の駅では5番目の乗降客。1階に筑豊本線、2階に鹿児島本線という複雑な造りから、乗り換えに時間を要し、バリアフリーに十分に対応できなかった。さらに、1988年に福北ゆたか線の短絡線=旧貨物線にホームが新設されたが、本屋から約150mも離れている。駅前や付近の道路が狭く、9カ所の踏切があって交通渋滞にも悩まされていた。
このことから現在、折尾駅を大改修する工事中。立体交差を止め、同じ階で乗り換えが可能になり、周辺線路は高架化。新ホームは、北側がすでに供用開始している筑豊本線ホーム(現6・7番線)、中央に鹿児島本線ホーム、南側が福北ゆたか線ホーム(現4・5番線)になる。新駅舎は2021年3月、筑豊本線ホームと鹿児島本線ホームの間に完成予定。旧駅舎を模したデザインになり、出入口は集約される。
現在の仮東口を出ると、明治時代、若松港まで石炭輸送の目的で建設された堀川運河が。運河沿いには、間口一軒ほどの小さなスナックや飲食店が並び、夜は水面に灯を映し、まさに昭和の雰囲気。その近くの煉瓦造りのアーチ橋は、2000年に廃止された西鉄北九州線の遺構で、煉瓦が斜めに積まれる”ねじりまんぽ”という特殊な構造。近代的に生まれ変わる駅とレトロな風景の対比が面白い。
折尾駅といえば、ホームの駅弁立ち売りが知られている。鶏のスープの炊き込みご飯に、鶏肉と錦糸卵をあしらった「かしわめし」は1921年から続く伝統の味。値段も手ごろで、列車旅のほかお土産にも喜ばれる逸品。今日もホームに「弁当!」の声が響き渡る。
(文・写真 東 淳二郎)
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