日本刺繍 〜 先人たちの技をひとつに描き上げ次代に伝え、残していきたい。 - 匠の技 - アクロス福岡
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匠の技

日本刺繍 〜 
先人たちの技をひとつに描き上げ次代に伝え、残していきたい。

日本刺繍
奈良の中宮寺にある天寿国曼陀羅繍帳が、現存する日本最古のものとされている日本刺繍。欧風刺繍との違いは大きく4点。欧風刺繍が木綿素材に市販の木綿糸を使用するのに対し、日本刺繍は絹糸で絹の素材に刺繍を施します。市販の糸を使わない日本刺繍では、縫い方や縫う面積などによって、太さや堅さが違う糸を自分で縒ります。個人差が出る糸縒りは、作品の仕上がりにも影響するため「糸縒り3年」と言われるほど技術を要するものです。縫い方も違い、糸で布をすくう欧風に比べ、日本刺繍は、台に張った水平の布に垂直に針を刺していきます。その分、同じ面積を刺すにも日本刺繍の方が針を刺す回数が多く、縫い目の細やかな仕上がりとなります。また、金糸、銀糸を多く使う日本刺繍は、華やかなものが多いのも特長です。

日本刺繍といえば、江戸刺繍の東京と、京繍の京都、加賀刺繍の金沢が本場です。しかし、京都から仕事の依頼を受けたり、相撲の化粧まわしを製作している日本刺繍家が前原市にいます。福岡、長崎、佐世保で日本刺繍教室も開いている田中幸さんです。もともと田中さんは、父親で日本刺繍家でもある田中幾重さんの日本刺繍教室の運転手として教室の運営をサポートしていました。しかし、教室で初歩的なことを教えるようになり、そうなると中途半端な姿勢ではいけないと、父親の元で技術の習得に励んだのが始まりでした。「日本刺繍は、糸の縒り方ひとつ取ってもいろいろで、繍技となれば100〜300種類もあります。欧風や、インドの刺繍が糸で絵を描く感覚だとしたら、日本刺繍は、先人たちが築き上げた多彩な縫い方を組み合わせ、一つの絵を描いていく感覚でしょうか。成り行きで入った日本刺繍の道ですが、今では、1600年もの歴史を持つ伝統工芸を、先人たちの素晴らしい技術を、どうやって残していくかを考えています」と田中さん。「空や想いなど、カタチのないものを刺繍で表現できたら」と将来の作品づくりへの意欲も覗かせていました。

  • 田中 幸(たなか・みゆき)
    田中 幸(たなか・みゆき)
    伝統工芸日本刺繍 光絲会。日本刺繍教室開講。大相撲化粧まわし製作や祭他、手刺繍全般を扱う。27歳で父親の仕事を継いだ後、横綱曙、水戸泉、琴欧州など、多数の力士の化生まわしの刺繍を手がけている。
  • 匠ギャラリーにて、『日本刺繍光絲会親子展』
    2009年3月23日(月)〜3月29日(日)まで開催!
    【10:00〜18:00(初日12:00から 最終日16:00まで)】
化粧まわしは、別の生地に刺繍したものを、生地の上に乗せて縫い付ける。立体感は、間に綿などを入れて出す
▲化粧まわしは、別の生地に刺繍したものを、生地の上に乗せて縫い付ける。立体感は、間に綿などを入れて出す
上に出ている針は右手で、下に出ている針は左手で布に垂直に刺す
▲上に出ている針は右手で、下に出ている針は左手で布に垂直に刺す
釜糸から縫い方によって糸を縒っていく。使用する針は10種類ほどだ
▲釜糸から縫い方によって糸を縒っていく。使用する針は10種類ほどだ
化粧まわしは博多織の生地に刺繍していく。短い場合、約2週間で仕上げる
▲化粧まわしは博多織の生地に刺繍していく。短い場合、約2週間で仕上げる
数寄屋袋やネクタイなど、日本刺繍を施した小物もつくっている
▲数寄屋袋やネクタイなど、日本刺繍を施した小物もつくっている