レオ・フセイン氏による青少年のための公開オーケストラ指導 イベントレポート
ゲルギエフ音楽祭の一環として、12月2日ゲルギエフの推薦する今最も将来を期待される若手指揮者レオ・フセイン氏による、福岡西陵高等学校管弦楽部への公開オーケストラ指導が行われました。
フセイン氏は、2003年から2006年にロンドン大学交響楽団の首席指揮者を務めるなど、同じ若い世代の音楽活動に深い興味と理解を持っており、その表現力、そして生徒たちへの的確な指示は大変興味深いものとなりました。
「演奏者は常に探究心を持つことがとても大事。楽譜に書いてある記号が全てではなく、なぜそう書かれているのか想像力を働かせる過程が演奏に表情を付け、心で感じる音楽が生まれる」と語る彼は、演奏中は何度も「why(なぜ)?」「imagine(想像して)」という言葉を生徒たちに問いかけながら熱心に指導していただき、未来の音楽家を目指す若い演奏家の貴重な体験となりました。聴講に訪れたお客様からも「1時間強という短い指導時間でしたが、音楽に色が付いていくのが見えた気がします」との言葉をいただきました。
I.S.公開オーケストラ指導後に、フセインさんに直接お話を聞くことができました。
以下はインタビューの内容です。
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アクロス(以下A):本日の指導を終えていかがでしたか?指導の前と比べ、音の表現が豊かになり色が出てきたように感じたのですが。レオ・フセイン(以下F):
そう感じてもらえると大変嬉しいですね。
指導の中で最も気にかけたことは生徒たち一人ひとりが考えて演奏をするようにということ。だって、ただ楽譜に書いてあるとおりに演奏するのならコンピューターにインプットすればいいことだから。そうではなくてハートで感じる演奏をするためには、演奏者自身が想像力を働かせて、「なぜ?」と問いかけながら演奏することがとても大事だと僕は思うんだ。とは言えイギリスの場合も、多くの指揮者が「こう弾きなさい」と言って演奏することの方が多いんだけど(笑)。
もちろん指揮者である僕はそれを考えるのが仕事だけど(笑)、指揮者だけでなくそれぞれの演奏者が考えながら演奏することによって、より聴く人の心に届く音楽が生まれると思うんだ。
A:フセインさんが高校生の頃はどのような生徒でしたか?指揮者になりたいと思ったのはいつ頃?F:僕が高校生の頃・・・思い出すのもひどい(笑)。当時僕はフルートを吹いていて、このフルートの腕がまた最悪だったんだけど(笑)、演奏については強い意志を持って、ここはこのように吹いて、ここはこのように演奏して・・・と楽譜に書き込んでいたんだ。ある日その楽譜が先生に見つかって先生の部屋に呼び出されてしまい、僕はとてもナーバスになった。だって怒られると思ったから。
待っていると先生がやってきて、「これは誰が書いたんだ」と聞かれ、恐る恐る「僕です」と答えると、「本当にこう思っているのか」とまた聞かれ「ハイ」と答えたところ、「次の練習から指揮をしろ。こう演奏するべきだと思うならそういう音楽を作れ」となって(笑)。そこから今の僕があるんだ。
A:若い演奏者に向けてメッセージをお願いします。F:今日の指導では「why(なぜ)?」「imagine(想像して)」という言葉を何度も生徒たちに言ったけど、演奏者は常に探究心を持つことがとても大事。それは決して終わることがないものだし、必ずしもその答えが見つかるものでもない。だけどなぜこの楽譜はこのように書いてあるのか?どうしてこの強弱の記号がここについているのか?常に考えながら演奏をしてほしいと思う。答えを見つけることが大事なのではなくて、その答えを探す過程がとても大事だと思うんだ。楽譜から想像力を働かせることによって、その音色により色が付いてくるものだから。
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