「ACROS」2016年7月号
12/16
(文 上田瑞穂) 小さいころから西洋の油彩画や日本画などの絵画作品が好きで、画家になりたいと夢見ていました。高校生になってもなおそう想い続けていたのですが、転機が来たのは高校三年生の時。たまたま選択科目であったコンピュータープログラミングの授業を受けて、その面白さに目覚めたんです。なにこれ、めちゃくちゃ面白いな、と(笑)。それまで、コンピューターで絵を描くというと、マウスを使って線を引いたり、クリックして色を塗ったりと、自分の手の代わりに機械が作業をするだけのものでした。必然的に出来上がりは自分で描くものを超えることはない。しかし、そこにプログラムが介在すると、自分の想像を遥かに超える、想定外の作品ができあがるのです。自分の芸術的発想に数式を組み合わせることで、思いもよらない「かたち」や「動き」が生まれるという面白さと出逢ってしまい、この世界に魅了され、はまりこんでいきました。 生まれも育ちも福岡なのですが、結果的にはこの町に住んでいることが制作活動にも非常に有利に働いているような気がします。というのも、我々の仕事は極端にいうと、朝起きて出勤し、パソコンに数十時間向かって、帰宅して寝る…という繰り返し。要は、いかに士気高く、やる気に満ち溢れた状態でパソコンの前に座れるか、というのが重要なのです。車で10分も走れば山や海があり、通勤電車のストレスもなく、美味しいごはんが手軽に食べられる。それでいて不便さもなく手に入らないものはないという全国屈指の住みやすさを誇る福岡の町は、そういった意味で多くのクリエーターを魅了しています。パソコンさえあればあとは自分の中にある感性やインスピレーションによってどこでもできる仕事だからこそ、住みやすい場所に人が集まるのです。そうして多くのクリエーターが福岡に集まった結果、クリエーター同士が刺激しあい、お互いのレベルが向上していく。そうなると今度は県や市といった行政もコンテンツ産業に対して意欲的となり、盛り上げようとしてくれるようになるんです。福岡市がスタートアップ都市として名乗りをあげ、アジアのシリコンバレーを目指していける理由の一つは、この町の「住みやすさ」にこそあると思いますね。のですが、常に私が目指しているのは「こんなことできるの?」と人々が驚く夢物語が現実になること。簡単に言うと、ドラえもんの世界が現実世界になることですね。50年後には当たり前になっているようなことを今、現実にすることで人々を驚かせ、楽しませたい。芸術的発想と技術力を組み合わせることで、誰もまだ見たことがない世界を実現させたいとワクワクしています。2016.July12プロフィール 投影対象が移動や回転を行っても映像が追従するという独自のプログラムによるプロジェクションマッピングを創出している。 平成25年には九州大学、福岡県、報道機関等からなる実行委員会が主催する国際コンペティション「2013アジアデジタルアート大賞展FUKUOKA」(応募作品数:国内および海外13の国や地域から515点)において、グランプリである「アジアデジタルアート大賞」を受賞。平成27年福岡県文化賞受賞。 Kudo Tatsuroデジタルアートクリエーター 現在も新しいプロジェクトを推進中な#4工藤 達郎
元のページ
../index.html#12