「ACROS」2016年9月号
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プロフィール音楽評論家、古楽器奏者。クラシカル・プレイヤーズ東京トロンボーン奏者。「音楽の友」で連載執筆中。「レコード芸術」月評担当。著書多数。元東京藝術大学非常勤講師。最新刊は「名曲の真相」(アカデミア・ミュージック)。佐伯 茂樹(さえきしげき)  10月8日〜10日の3日間、今年で3年目になる新・福岡古楽音楽祭が開催される(福岡古楽音楽祭時代から数えると18年目)。期間中は、フランスのストラディヴァリア・ナント・バロック・アンサンブルをはじめとするさまざまなコンサートのほか、一流奏者たちによるマスタークラスやセミナー、古楽器の展示などもあり、聴くだけでなく、参加したり古楽器に間近で触れたりすることもできる。「古楽」というと、一部の好事家が古めかしい音楽を内輪で楽しんでいるというような印象を持たれる方もいらっしゃるかもしれないが、それは全くの誤解。嘘だと思うのならば、一度、新・福岡古楽音楽祭に足を運んでみて欲しい。「本当にこれがクラシック?」と思うような自由で生き生きとした音楽を体感できるはずだ。たとえば、10月9日に福岡シンフォニー当時の音楽で体験できる貴重な3日間!ホールでおこなわれるストラディヴァリア・ナント・バロック・アンサンブルのコンサート。するルベルのバレエ音楽「四大元素」という曲は、風火水地という自然界の構成要素を描いた異色の作品で、冒頭のカオス(混沌)と名付けられた曲は、まるで20世紀のサスペンス映画のBGMのような大胆な不協和音で始まる。実際に、そのドラマティックで斬新な音楽をステージで聴けば、古楽に対する見方が180度変わるだろう。もう1人のフランソワ・フランクールは、ルベルの息子フランソワ・ルベルと共にパリの王立音楽アカデミーの音楽監督を務めた人物。この日に演奏される「ロイヤルフェストのための交響曲」では、マリー・アントワネットがフランス王妃になる前年のルイ王朝末期の華麗な雰囲気を楽しむことができる。滅多に演奏されない曲なので、お聴き逃しのないように。この他にも、寺神戸亮、曽根麻矢子、前田りり子、上村かおりらわが国を代表する古楽器奏者たちのコンサートやセミナーも開催されるので、こちらも顔を出してみることをお勧めする。「古楽」というのは、決して古めかしい音楽を懐古して楽しんでいるわけではない。古びた暗いルネサンス時代の絵画の表面にこびりついた汚れを洗浄したら、鮮やかな色彩の絵が現れたときのような新鮮さがあるのだ。10月になったら、新・福岡古楽音楽祭に出かけて、古くて新しい「古楽」の魅力を味わっていただきたい。ⒸShunichi Atsumi 「フラウト・トラヴェルソ」というのはバロック時代のフルートのこと。 なぜ、わざわざ「トラヴェルソ(横に構える)」と言い添えるのかというと、当時は「フルート」というと縦笛のリコーダーのことを指すことが多かったから。それと区別するために「横に構える笛」と呼んでいたのだ。 フラウト・トラヴェルソは、現代のフルートのような複雑なキーメカニズムは付いていない。そのため、フ フラウト・トラヴェルソは、現代のフルートのような複雑なキーメカニズムは付いていない。そのため、フラットやシャープがたくさん付くと指遣いが煩雑になり、調性によって響きが違ってしまうといラットやシャープがたくさん付くと指遣いが煩雑になり、調性によって響きが違ってしまうという問題があったのだが、当時の作曲家は、その欠点を逆手にとって、響きの違いをう問題があったのだが、当時の作曲家は、その欠点を逆手にとって、響きの違いを明暗の表現手段として生かしていた。ぜひ、その響きの陰影を生で明暗の表現手段として生かしていた。ぜひ、その響きの陰影を生で体験してみて欲しい。前田 りり子上村 かおり寺神戸 亮小池 ユキ曽根 麻矢子2016.September03[古楽器等展示]「フラウト・トラヴェルソ」ほか、普段はなかなか目にすることができない古楽器を展示します。「フラウト・トラヴェルソ」ほか、普段はなかなか目にすることができない古楽器を展示します。※日時によって場所が変わります。詳細は、新・福岡古楽音楽祭ホームページをご覧ください。実際に古楽器を見てみよう!古楽器おはなし     の10/9 [日]そそのの内内容容はは実実にに面面白白いい。。ここここでで彼彼ららがが演演奏奏作作品品がが並並んんででいいるるがが、、なないい名名前前のの作作曲曲家家ののククーールルとといいうう聞聞ききななれれととフフラランンソソワワ・・フフラランンジジャャンン==フフェェリリ・・ルルベベルル華華ややかかななりりししルルイイ王王朝朝時時代代ののパパリリのの雰雰囲囲気気ををストラディヴァリア・ナント・ストラディヴァリア・ナント・バロック・アンサンブルバロック・アンサンブル

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