「ACROS」2016年11月号
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*ドミートリイ・ショスタコーヴィチの姓名の頭文字をドイツ音名D-Es-C-H(レ♭ミドシ)の4音にあてたモチーフ。ショスタコーヴィチ自身によって自らの音楽的イニシャルとして、何度も繰り返し用いられた。uzakotoM ebanaTomotusaY inatigOaloiVniloiVプレトーク知れば知るほど おもしろい!コンサートに 行きたくなる!メンバーの金913Q:今回演奏される交響曲第10番は どんな作品ですか?扇谷 泰朋:始まりから、本当にショスタコーヴィチらしい。陰鬱なハーモニー。弦の響きがものすごく厚いということは、彼のシンフォニー全般に言えます。ショスタコーヴィチの交響曲は15曲ありますが、弦楽四重奏も15曲残していて、弦楽作品を書くのに長けた作曲家だと思います。田邉 元和:そうですね。ちなみに、彼の遺作はヴィオラの作品だったんですよ。僕は、ショスタコーヴィチの作品を演奏すると、オーケストラの団員になって良かった(!)と心底実感します。それくらいオーケストラ冥利に尽きる作品。大編成で、迫力が凄い。扇谷:ショスタコーヴィチがソ連の政治体制に翻弄された作曲家というのは有名な話ですね。もちろん彼だけでなくて、それは当時の演奏家たちにも通じること。例えば演奏会で1音派手に外してしまったら、翌日どうなっているか分からない、そういう国と時代だった。田邉:第10番は、スターリンが亡くなった後に発表されていて、反体制のメッセージが込められているとかいろいろ言われていますが…扇谷:演奏者として作品の背景を知る必要はあると思うんです。でも、当時彼らが感じた恐怖感は分かりたくても分からないし、すべて想像でしかない。本当の意味で表現できているんだろうかって、特に彼のような作曲家の作品を演奏する時にはいつも思います。だからせめて、学問的に真摯に作品を奏でたい。聴いていて楽譜が見えるように忠実に演奏したいといつも思っています。田邉:楽譜に忠実っていう姿勢は、小泉九響のソロコンサートマスター扇谷泰朋さんと、ヴィオラ田邉元和さんに第355回定期演奏会のプログラムについてお話を聞きました。しんしみょうりコンサートマスターとして他のオーケストラでも演奏される機会の多い扇谷さんと、入団20年になるという田邉さん。九響らしさって何だと思われますか?田邉:他のオーケストラの人からは、「明るいオケだね」っていうのはよく言われます。開放感のある末永文化センターの練習場がそうさせるのかな。過去に東京公演をした時は、「そんなにテンション高いの!?」って(笑)。扇谷:怖いもの知らずで出せる音っていうのはあると思います。それがハマった時の九響の演奏は本当にすごい。僕は12年くらい一緒にやっているけど、確実にレベルは上がっています。その背景に若い団員が増えていることはありますね。もっともっと上を目指せると思っています。田邉:入団して20年、過去に同僚に「九響に授業料はらえ」って言われたことがあります(笑)。成長を認めてもらえたということで僕にとってそれは最高の褒め言葉でしたね。近年で言えば、小泉監督と楽団の信頼関係あってこその音楽創りができていると思います。すごくありがたいです。扇谷:小泉監督指揮で、これまでショスタコーヴィチを演奏したことある?田邉:少なくともこの20年は一度もなかったですね。そういう意味でも今回の定期は楽しみです。監督の師匠カラヤンがショスタコーヴィチのシンフォニーの中で唯一指揮した10番です!監督の指揮に通じますね。 これも有名な話だけど、ショスタコーヴィチの作品には、自分自身の名前を音でなぞった「レミドシ」*のモチーフが多用されています。少し気をつけて聴くと、この作品でもリズムや調性を変えていたるところに聴こえてきますよ。ソロコンサートマスター扇谷 泰朋ヴィオラ奏者田邉 元和※本公演のコンサートマスターは豊嶋泰嗣です。指揮:小泉和裕ピアノ:若林顕S席¥5,200 A席¥4,200 B席¥3,100(学生¥1,100) アクロス福岡チケットセンターにて発売中2016.November19:00開演福岡シンフォニーホール#20聴きに行こう!九州交響楽団 第355回定期演奏会生誕110年 ショスタコーヴィチ礼賛12/ベートーヴェンピアノ協奏曲第3番ショスタコーヴィチ交響曲 第10番
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