「ACROS」2016年11月号
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PROFILE1956年福島県生まれ。音楽ジャーナリストとして「音楽の友」「モーストリー・クラシック」誌などに執筆を続けるほか、NHK・FM、JーWAVEなどラジオでもクラシック情報を発信している。福岡シンフォニーホールには数多く登場していただいていますがどんな印象をお持ちですか? シンフォニーホールはとても素晴らしいホールだと思います。よく「ホールは楽器」といいますよね。やはり誰もが良い楽器で素晴らしい曲を演奏したい、ストラディヴァリウスで名曲を奏でたいのです。私も一緒です(笑)。公演を楽しみにしているファンの皆さまにメッセージをお願いいたします。 九州交響楽団とはおつきあいも長く、年に10回ほどご一緒しています。四季折々の美味しい食事、そして明るい人々に出会える福岡はとても大好きな街です。その福岡で皆さまにお会いできるのを楽しみにしています。片桐 卓也 (かたぎり たくや) ふくあきらだん いく ま   べい  第  し かいぬづかぎょうつくさん風景は変化するけれど、風土は変わらずそこにあり続ける。日本各地を旅することも多いけれど、そんな時にそんな言葉がふと脳裏をかすめる。その変わらぬ風土が、人々の営みの基礎となり、各地に独自の個性を与えていく。文化もその風土の上に咲く。音楽も風土の影響を受けるだろう。クラシック音楽で言えば、ベートーヴェンの交響曲第6番「田園」を聴く時に思い浮かべるのは、起伏に富んだオーストリアの風景や、広大な広がりを持つハンガリーの草原だったりする。ブラームスなら北ドイツの風景、グリーグならノルウェーの深いフィヨルドの風景が浮かぶ。それと同じように、日本人作曲家の作品を聴く時、その背景に浮かぶのは、やはり日本の風土なのである。私は、例えば、伊福部昭の「ゴジラ」の音楽の中にも、北海道を感じてしまうのだが。團伊玖磨は、祖父、そして父親が筑紫地方と深く関わりを持っていたことから、この地に愛着を持っていた。そして福岡市制100周年を記念する長大な作品「筑紫讃歌」を書いた。初演は1989年11月10日、福岡サンパレスにおいて行われた。作曲者自身の指揮、オーケストラは九州交響楽団、合唱は筑紫讃歌記念合唱団、ソリストは金岡裕子(ソプラノ)、山口俊彦(バリトン)だった。その翌年の再演も團が指揮したが、團は2001年に中国旅行中に急逝。その1周忌のコンサートで、現田茂夫が「筑紫讃歌」を指揮したが、これは12年振りの演奏となった。作詞者の犬塚堯と作曲者の團は、作品を書くにあたって、壱岐、対馬まで出向き、玄界灘の荒海を体験したという。そして、古くから中国大陸、朝鮮半島と深い関わりを持つこの筑紫地方の歴史、文化を、壮大な8楽章のカンタータにまとめあげた。ソリストと合唱、オーケストラが一体となって作り上げる作品は、團という作曲家のスケールの大きさを感じさせるものである。これが何度も再演され、愛されているのは、やはり音楽と風土が一体となっているからだろうと想像する。今回の演奏会では、團伊玖磨の初期の作品である「交響曲1番イ調」も演奏される。1950年に近衛秀麿指揮、日本交響楽団(翌年にNHK交響楽団となる)によって初演された交響曲で、単一楽章。しかし、そこには團の音楽的な個性がすでに刻印されている興味深い作品である。「筑紫讃歌」とあわせて、團伊玖磨という作曲家の世界にじっくりと浸ってみよう。あなたはそこにどんな世界を感じるだろうか?ソリストと合唱、オーケストラが一体となった壮大な「筑紫讃歌」を体感しよう2016.NovemberⒸ三浦興一03Genda Shigeo1996年より13年間神奈川フィルハーモニー管弦楽団を指導し飛躍的に躍進させ、その功績も称えられ2009年より名誉指揮者の称号を得る。また、世界的チェリスト故ロストロポーヴィチと皇后陛下の古希祝賀コンサート等で共演し高い評価を得た。オペラ指揮者としても経験豊かで、2004年秋にはスロヴァキア国立歌劇場の“椿姫”を指揮し、好評を博した。2014年には市川右近新演出“夕鶴”の全国公演も行い高評を得、本年再演を行った。公演情報日 時 11月13日[日] 15:00開演会 場 福岡シンフォニーホール料 金 S席3,500円 A席2,500円   (学生各席1,000円引き)曲 目 團伊玖磨:交響曲 第1番 イ調    作詞/犬塚堯・作曲/團伊玖磨:        合唱とオーケストラのための組曲        「筑紫讃歌」現田 茂夫(指揮者)

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