鎌倉時代の1235(嘉禎元)年、ベンチャー精神あふれる一人の青年、満田彌三右衛門(みつたやざえもん)は、新しいビジネスのため、最先端技術国である宋へと圓爾辯圓(えんにべんえん)(勅諡聖一国師)(ちょくししょういちこくし)と共に旅立ちました。命の危機を乗り越えながら、博多織のルーツとなる織物技術を持ち帰りました。アレンジし、博多織となった織物は全国的な人気となりました。

想いをまとう
柄や色にはさまざまな意味が込められています。人々は帯とともにその想いをまといます

福岡の街の彩り
福岡の街中にも献上柄のデザインが見られます。街を彩り、人々の心に博多織は根付いています

上質な気品
幕府へ献上された織物らしい上質な絹の艶と張り、豊富な柄、いつの時代も変わらぬ気品を醸し出します。



博多織ができるまで

1. 図案

織物のデザインを決める作業です。日本の四季や風習を表現し長く継承されてきた定番の文様や、新たに描き起こされた図案などを組合わせて、イメージを固めていきます。



2. 意匠図

図案をもとに、方眼紙に経糸(たていと)と緯糸(よこいと)の交差具合(幅・糸数など)を示す織組織を描き起こす作業。幅1mmにも満たない糸一本さえも調整する、きわめて緻密な設計作業です。現代では一般的に、データ上で設計を行います。



3. 精煉(せいれん)

蚕の繭から紡いだ生糸の油分や汚れを取り除き、柔かな絹糸に仕立てる作業です。石けんなどを使って、数時間丁寧に洗うと、糸にふっくらと光沢が出ます。



4. 染色

精練した糸を染料で染め上げる作業です。一定量の糸を輪のように束ねた「綛」という状態で作業をかせ進めます。イメージどおりの色を出すには熟練の経験が必要です。



5. 糸の準備

糸を染めても、すぐに博多織が織れるわけではありません。織りやすいように糸を整えたり、意匠図に沿って、さまざまな色の経糸と緯糸を緻密にセッティングしたり、考えたデザインや染めた糸が無駄にならないように、準備がとても大切です。



6. 製織(織作業)

手織機にセットされた経糸に、シャトルの緯糸をくぐらせ打ち込んでいく、織作業のハイライト。「トーン、トントントン」のリズムで打ち込み数を確認しながら、糸が切れていないか、柄がきちんと出ているかなど、全集中力を注ぎ込んで仕上げます。



7. 検品

完成した博多織はさまざまな検品を経て、商品として販売されます。証紙はこの工程をクリアしてきた証です。商品の種類や絹を使用している割合によって証紙を貼り分けています。