1800(寛政12)年頃、久留米の米屋に井上伝(いのうえでん)という、当時12歳ほどの少女がいました。久留米絣は彼女の探究心が生み出した織物です。藍染めの着物を何度も洗うと色が抜け落ちるため白い斑点ができます。この斑点を調べるため糸を解き、現れた糸と同じように新しい糸を染めたことがきっかけとなりました。そしてできた織物を加寿利(かすり)と名付け、生産すると全国に拡まるほど評判となりました。

色も模様も全て染めで表現
久留米絣は出来上がりのデザインに合わせて糸の中で染めない部分を先に決めて括ります

使えば使うほど美しくなる
糸から染める手間ひまかけた作り方のおかげで表面がきれいに洗われるほど色が映えま

福岡の文化を支える
博多祇園山笠の正装である長法被は久留米絣です。福岡を代表する祭り文化を今も支えています



久留米絣ができるまで

1. 構想

約30の工程を経て織りあげていきますが、まずはデザインを考えます。抽象柄、具象柄、伝統文様などはありますが、そのアレンジやパターンの大小などは職人の個性によります。それらを紙に描きながら構想をまとめていきます。



2. 下絵

絣を織るためには、デザインを経糸と緯糸に割り当てなければいけません。職人は技術と経験だけでなく、入念な準備も欠かさないのです。



3. 整経(せいけい)・整緯(せいぬき)

経糸、緯糸の本数や長さを整えて括りに向けた準備を行います。糸の伸縮も計算しながら長さを決めていきます。



4. (くく)

出来上がったときに柄になる部分を括って、染まるのを防ぎます。絣模様の原点とも言える、重要な作業です。



5. 染色

濃度別に用意した藍がめに順番に入れていき染色を行います。5〜60回浸して絞りを繰り返すことで、糸の中までしっかり染まり、洗うほどに色がさえてくる久留米絣の糸となります。近年では化学染料を使い、色味も多様になっています。



6. ほどき・洗い・乾燥

染めた糸を1本ずつ丁寧にほどき、洗って乾燥させます。伸ばしながら乾燥させることで、伸縮を少なくします。



7. 製織

糸の柄を合わせ、巻箱に巻き、経糸・緯糸を緻密に織り合わせながら絵紙で描いた柄を紡いでいきます。経糸と緯糸の両方で柄を織り出す「本絣」、経糸で柄を織り出す「絵絣」、緯糸で柄を織り出す「板絣」に分けられます。織った後は水洗いし、日陰干しすることでしなやかな仕上がりとなります。