次の時代を担う演奏家、そして聴衆を育てようというアクロス福岡独自のプログラムが「チョン・ミョンフン・プロジェクト」だ。
2012年から本格的に始動し、様々な形でのコンサートが行なわれた。そして2013年は春から秋まで、長い期間に及ぶプロジェクトが企画された。
まず、2012年に九州交響楽団を指揮してスケールの大きなマーラーの交響曲を届けてくれたチョン・ミン氏が、福岡県内の高校生、大学生のオーケストラと共に音楽を作り上げる。そのコンサートは5月5日。韓国国内でも若者を指導し、優れた成果をあげている彼の手腕に期待したい。
続いて6月13日には、チョン・ミョンフン氏の姉にあたる世界的なヴァイオリニスト、チョン・キョンファさんのコンサートが行われる。ピアニストにケヴィン・ケナー(1990年のショパン国際ピアノコンクール最高位)を迎えて、ブラームスのヴァイオリン・ソナタ第1番「雨の歌」などを披露する。情熱的な演奏に期待が高まる。
そして、秋には、チョン・ミョンフン氏が率いるフランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団のコンサートに続き、日本での長いパートナー・オケである東京フィルハーモニー交響楽団をチョン・ミョンフンが指揮して、ワーグナーの大作「トリスタンとイゾルデ」がコンサート形式で上演される。一方ではベルリオーズの「幻想交響曲」を中心とするフランス的な世界を、そして一方では今年生誕200周年を迎えるワーグナーの世界を、チョン・ミョンフンのタクトで味わえるわけで、これはまさに千載一遇の機会と言える。
アクロス福岡ならではのプロジェクトを、ぜひ一緒に体験して頂きたい。
レポート/片桐卓也(音楽ジャーナリスト)
チョン・ミン
チョン・キョンファ
ケヴィン・ケナー
チョン・ミョンフン
フランス国立放送フィルハーモニー管弦楽団