声楽界に彗星のごとく現れ、またたく間に世界の歌劇場のステージに立ち、こまやかな音楽づくりに、生まれ持ったなめらかで艶のある声をのせて聴衆を魅了してきたジュゼッペ・サッバティーニ。2003年には、ウィーン国立歌劇場から宮廷歌手の称号を与えられるなど、その類まれな逸材ぶりはとどまることを知らず、2007年、かねてから宣言していたとおり指揮者になる夢を果たします。以後、洗練された音楽の解釈で、表現の手段を選ぶことなく、それは後進への熱心な指導にも反映されています。
声楽家として活躍する以前は、歌劇場の首席コントラバス奏者という稀有な経歴の持ち主。歌い手としてステージに帰ってくる今回は、音楽のみならず人生を一緒に歩んできた30年来の親友で、同じく指揮者としてもキャリアの長いマルコ・ボエーミと共演します。積み重ねられたものが今の彼の声となって、福岡シンフォニーホールに響きます。
アクロス福岡開館3周年の特別公演以来21年の歳月を経て、スペインが生んだレジェンドで三大テノールのひとり、ホセ・カレーラスが生の歌声を聴かせてくれます。前回と同じくイタリア出身のピアニスト、ロレンツォ・バヴァーイとのリサイタル。
タイトル「Intima(インティマ)」は、intimacy(親密さ、愛情)の意味からカレーラス自身が選び、“愛する人に向けた歌”の数々を溢れんばかりの深い愛情で歌い上げます。今回のプログラムにある南米の作曲家ナーチョの「いとしいひと」は、21年前の公演でも歌われた曲ですが、ほかの曲目もカレーラスがそのキャリアで長く歌い続けてきた、一通りでない想いのこもったものばかりという至極のプログラムに、演奏を聴く前から酔いしれます。
キャリアの絶頂期に白血病を発症し、奇跡的な復活を果たしたカレーラス。病を克服後、自らが財団を設立し、白血病が「完治する病」になることを目標に30年におよび精力を注いでいます。復活後、さらに輝きを増して年齢を重ねる彼の姿は、演奏を通して多くの人々に感動を与え続けています。今秋いよいよ福岡の地でレジェンドに出会えます。
現代で最高とも言われる超絶技巧を武器に、世界中の歌劇場で活躍する新星が初来日公演。得意のバロック・オペラの中から、ヘンデルのオペラ・アリアの名曲を披露いたします。共演は、ザルツブルク音楽祭などでも活躍する世界屈指の古楽器オーケストラ「ヴェニス・バロック・オーケストラ」で、自慢のヴェネツィアンサウンドを奏でます。
バロック・オペラの特徴は歌手の声。当時はカストラート(声変わりしないように去勢された男性歌手)が、高音を披露していたので、現代でもバロック・オペラを演じるときには男性が高音を歌うカウンターテナーに大きな注目が集まります。今回、ヘンデルのオペラからは「リナルド」や「アリオダンテ」からの名アリアを選曲。フランコ・ファジョーリが自身で選んだヘンデル選りすぐりのアリアです。メゾ・ソプラノにも匹敵するカウンターテナー歌手ファジョーリが、バロックのスペシャリストの演奏と共に、超絶技巧と迫真の感情表現をもって歌い上げます。
クリームのようにまろやかで密度の濃い声。女声か男声か、3オクターブの声域による性別を超えた驚愕のカウンターテナー。際立つ声の魅力に圧倒されることは、間違いありません!