#12 筑前琵琶演奏家 尾方 蝶嘉 (おがた ちょうか)
撮影協力:箱嶋家住宅
伝統芸能というと、家元に生まれて継いで…と想像される方が多いかもしれませんが、私は全くそういった系譜をたどっていません。父は一般的な会社員でした。ただ、歌舞伎や新劇などは好きだったようで、昔から家ではよくそういったテレビ番組を見ていましたね。運命の出合いがあったのは、13歳のとき。中学校で仲の良かった子が4歳から筑前琵琶を習っていたんです。学校の文化祭で弾いてくれたのですが、その音色に一瞬で魅了されてしまって。「なんかわからんけど、すごい!」と直感的に感動しました(笑)。私が興味を持っているのを知って、「一緒にやってみらん?」とその子が誘ってくれ、春吉にあった嶺青流(れいしょうりゅう)流祖である嶺旭蝶(きょくちょう)先生のもとに連れていかれたんです。その日のうちに「はい、弾いてごらん」と琵琶を渡され、あっという間に気づいたらここまで28年、弾き続けてきました。人の縁って不思議ですよね。
琵琶に惹かれた理由の一つに、楽器としてのエキゾチックな音色の深さ、美しさもありますが、それ以上に何より語りの存在があります。先人たちが生きた足跡を、生の声で伝えること、自分がその役になりきったり、あるいはストーリーテラーとして俯瞰したり、そのあわいを行きながら歴史や世界を表現できること。演奏のたびにこの意義深さを実感します。楽器を極めることが到達点ではなく、物語を表現し、伝え、お客さまと共有する楽しみがあることが、最大の魅力ですね。と同時に演奏者としては、口伝で継がれる技術習得の難しさ、楽器も語りも簡単には御しきれないハードルの高さこそが、一生をかけるに足ると奮起し続ける原動力になります。簡単にマスターできるものはすぐに飽きてしまうでしょう?難しいことに挑み続ける“楽しさ”を、若い世代にも知ってもらえたらと思います。
先日41歳になりましたが、10代の時に演奏していた演目を、20代、30代と重ねるうちに感じ方が少しずつ変わってくることに気づきました。そういう自分の感性の変化を感じられるのも、伝統文化に携わっていて良かったと思える瞬間です。年をとったらとったなりに、自分が成長していることを自覚できる舞台があるのは幸せですよね。老けた、と嘆くばかりではなく(笑)。同じ演目でも演者が違えば全く違う舞台になるように、自分の年齢や成長によってもまた全く違う舞台を作り出せる喜びを感じます。
今は演奏するのみならず、琵琶曲の作詞や作曲を手掛けたり、日本初となる筑前琵琶による人形浄瑠璃座「筑前艶恋座(つやこいざ)」の座付奏者もしていますが、根底にあるのは、琵琶を通して人間の普遍的な営みや情感を伝え続けていきたいという想い。平家物語の時代も私たちが暮らす現代も、人の生き方はそう変わってないんです。親が子を思う気持ち、喜怒哀楽など、時空を超えて共感できる想いは一緒。そんな瞬間を舞台を通して感じてもらえたら嬉しいですし、千年以上続く琵琶という文化を、次世代にも豊かに伝えていく役目を果たしていきたいと思っています。
琵琶に惹かれた理由の一つに、楽器としてのエキゾチックな音色の深さ、美しさもありますが、それ以上に何より語りの存在があります。先人たちが生きた足跡を、生の声で伝えること、自分がその役になりきったり、あるいはストーリーテラーとして俯瞰したり、そのあわいを行きながら歴史や世界を表現できること。演奏のたびにこの意義深さを実感します。楽器を極めることが到達点ではなく、物語を表現し、伝え、お客さまと共有する楽しみがあることが、最大の魅力ですね。と同時に演奏者としては、口伝で継がれる技術習得の難しさ、楽器も語りも簡単には御しきれないハードルの高さこそが、一生をかけるに足ると奮起し続ける原動力になります。簡単にマスターできるものはすぐに飽きてしまうでしょう?難しいことに挑み続ける“楽しさ”を、若い世代にも知ってもらえたらと思います。
先日41歳になりましたが、10代の時に演奏していた演目を、20代、30代と重ねるうちに感じ方が少しずつ変わってくることに気づきました。そういう自分の感性の変化を感じられるのも、伝統文化に携わっていて良かったと思える瞬間です。年をとったらとったなりに、自分が成長していることを自覚できる舞台があるのは幸せですよね。老けた、と嘆くばかりではなく(笑)。同じ演目でも演者が違えば全く違う舞台になるように、自分の年齢や成長によってもまた全く違う舞台を作り出せる喜びを感じます。
今は演奏するのみならず、琵琶曲の作詞や作曲を手掛けたり、日本初となる筑前琵琶による人形浄瑠璃座「筑前艶恋座(つやこいざ)」の座付奏者もしていますが、根底にあるのは、琵琶を通して人間の普遍的な営みや情感を伝え続けていきたいという想い。平家物語の時代も私たちが暮らす現代も、人の生き方はそう変わってないんです。親が子を思う気持ち、喜怒哀楽など、時空を超えて共感できる想いは一緒。そんな瞬間を舞台を通して感じてもらえたら嬉しいですし、千年以上続く琵琶という文化を、次世代にも豊かに伝えていく役目を果たしていきたいと思っています。
(文・上田瑞穂)
プロフィール
福岡県生まれ、福岡市在住。嶺青流筑前琵琶保存会師範、筑前琵琶「嘉の会」主宰、日本琵琶楽協会会員。13歳より筑前琵琶を嶺旭蝶、青山旭子に師事。琵琶による現代邦楽を田原順子に師事。2014年 NHK邦楽オーディション合格。2017年 ダンスフリンジフェスティバル観客賞受賞。2017年 天皇皇后両陛下ご臨席「第37回全国豊かな海づくり大会福岡大会」式典演奏参加。2018年 第55回琵琶楽コンクール2位入賞。