#22 第61期かるたクイーン 鶴田 紗恵(つるた さえ) - アクロス福岡
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#22 第61期かるたクイーン 鶴田 紗恵(つるた さえ)

第61期かるたクイーン 鶴田 紗恵(つるた さえ)

よく「小さい頃からかるたで遊んでいたんでしょう?」と聞かれるのですが、全く無縁でした。幼少期はピアノを中心にいろんな習い事をしていましたが、かるたに出逢ったのは高校に入学してから。どの部活に入ろうか悩んでいたときに、部員が集まっていない百人一首部の先輩から誘われて、なりゆきで入部しました。かなり偶然というか、運命的だったんですよ(笑)。
「ちはやふる」という漫画がブームのころだったので、競技かるたという存在自体は知っていましたが、自分がその世界に身を置くなんて考えたこともありませんでした。入部してまずすぐ覚えたのは、決まり字。百人一首には上の句の何文字かまで詠まれれば、下の句が確定できるという「決まり字」があります。たとえば、「む」から始まる上の句は「むらさめの…」の一句しかないので、「む」と聞こえた時点で対応する下の句の「霧たちの…」を取れるわけです。最初の一字で下の句を取れるものもあれば、二文字、三文字が必要なものもあり、それら全ての組み合わせを覚えるのが最初の勉強でした。
はじめのころは当然、先輩たちから一枚も取れないのですが試合形式でトレーニングを積むうちに面白さがだんだんとわかってくるんです。必要なのは記憶力だけではなく、反射神経や姿勢、手の動かし方、払い方など多岐にわたります。これまでのどんなスポーツとも違う独特の世界観に魅せられていきました。私自身、人より何か優れていたという自覚はないんです。耳がいい、と褒められたことはありましたが、人一倍というほどでもなく。あえていうと、映像記憶力というのか、目に映ったものを写真のように記憶する能力は少しあるほうかもしれません。とはいっても始めてから2年、高校3年生の時に最上級レベルのA級で優勝したときには驚きましたね。もちろんかるたには運もあるので、恵まれていたのだと思いますが、昔から人と競うタイプではなく、スポーツなどでも特に秀でていなかった私がなんで?と驚きました。一番驚いたのは親だったかもしれませんが(笑)。
その後大学に進学するとそれまでより練習にかけられる時間が増えました。高校時代は学校が終わったあとに1試合(1時間半)できれば十分というくらいでしたが、大学に入ってからは毎日3試合くらいしていましたね。22歳のときにクイーンの称号をいただいたことで、改めて自分の中でかるたの存在が大きくなっていきました。
この競技は他のスポーツなどと比べて、始めるハードルが低いと思うんです。大人になってから楽器やゴルフなど新しいことを始めるのは難しいですが、百人一首は最初の「決まり字」のルールだけ乗り越えたら、すぐに楽しくなります。小学生からご年配の方まで一緒に楽しむことができ、生涯を通して続けることができる数少ない競技。しかもプロ化されずにアマチュアのみの世界ですから、誰もがいつでも一番を狙えるんです。現在、母校のコーチも務めていますが、私の時代よりもぐんと競技人口が増えたことを感じますね。たくさんの人がかるたの楽しさを知り、さらに百人一首の世界が盛り上がっていくといいなと思います。この国で千年伝わってきた文化ですから。

(文・上田瑞穂)

プロフィール 1996年福岡市生まれ。筑紫女学園高校で百人一首部に所属し、高校三年生の時に最上位クラスのA級で優勝。九州大学に進学後、2018年の22歳の時に全国女流選手権大会でチャンピオンとなり、クイーンの称号を得た。現在、九州大学大学院で心理学を専攻中。九州かるた協会所属。