#23 イラストレーター 谷口 亮(たにぐち りょう)
小さいころから落書きレベルですが、絵を描くことは好きでした。ドラえもんやトムとジェリーなどを真似て描いてみたり、保育園でも絵ばかり描いていましたね。小学校に入るとファミコン全盛期の時代でゲームのキャラクターを描く仕事がしたい、なんて思っていました。幼少期は何を描いてもとにかく父が褒めてくれるんですよ。プロのイラストレーターである父の仕事については漠然としか理解していませんでしたが、単純に父が褒めてくれるのが嬉しくて、毎日のように何か描いていました。
進路を考える年齢になっても、やはり三つ子の魂百までというか、生涯絵に関わろうという想いは持っていました。アメリカの美術系の大学に進んだのですが、高校半ばくらいからは幼少期とは真逆で、何を描いても父にダメ出しばかりされていました。全く褒めてくれないんです。それでもきちんと見てくれて、悪いところをあぶりだしてくれるので嫌な気はしなかったですね。むしろ、身近にプロの厳しい目がある環境に感謝していました。
アメリカの大学時代はとにかくデッサン漬けでした。人を描くのが好きで。今思うと、このときしっかりとデッサンを学んだことが、のちに役に立ったと思っています。
卒業後に帰国してからはアルバイトをしつつ、父のアトリエで作品を描いたり…という生活をしながら、将来を考えあぐねていました。絵で身を立てる、という目標だけは定まっていたものの、イラストなのか漫画なのか絵画なのか、何を描きたいのか固まっていなかったのです。そんなある日、中学時代の落書きが目に入り、いじって猫のキャラクターを描いみたら、それが父の目に留まりました。「お前の描くキャラクターはいいな。それ一本で行け」と本当に久々に、褒められたんです。この時は「父の言葉」というより、「プロの言葉」として褒められたのが嬉しくて、素直に「よし、やってみよう」と思いました。この日から、キャラクターデザイナーとしての自分の立ち位置が定まった気がします。
さまざま企業や団体からマスコット等のデザイン依頼を受けていますが、私のスタイルは「余計なものはそぎ落とす」引き算型。マスコットはシンプルなほうがメッセージが強く伝わると思うので、いかにポイントを引き立たせるかを肝としています。例えば東京オリンピック公式マスコットキャラクターに選ばれた「ミライトワ」。最初はチョンマゲにしようとかいろんなアイデアがあったんですよ。しかし、ポイントは「市松模様」だと。これを最大限際立たせるデザインにするために、どんどん引き算をしていって今の姿に落ち着きました。シンプルであればあるほど、デザインの力が発揮されると思っています。
実は今、博多人形師を目指したいと思い育成塾に通っているんです。そもそもキャラクターをソフトビニール人形などの3次元化することは好きだったのですが、それとはまったく別に伝統工芸としての博多人形にも興味を惹かれていました。まずは伝統に敬意を払って、童ものや美人ものなど、基本と言われるものをしっかりと作れるようになりたいですね。諸先輩方にそれらを認めてもらえるようになったら、自分のキャラクターの要素を加えるなど、新しい風を伝統工芸の世界にも吹かせられたらと、夢見ています。目指せ、与一賞!…なんて言ったら、怒られちゃいますかね?(笑)。
進路を考える年齢になっても、やはり三つ子の魂百までというか、生涯絵に関わろうという想いは持っていました。アメリカの美術系の大学に進んだのですが、高校半ばくらいからは幼少期とは真逆で、何を描いても父にダメ出しばかりされていました。全く褒めてくれないんです。それでもきちんと見てくれて、悪いところをあぶりだしてくれるので嫌な気はしなかったですね。むしろ、身近にプロの厳しい目がある環境に感謝していました。
アメリカの大学時代はとにかくデッサン漬けでした。人を描くのが好きで。今思うと、このときしっかりとデッサンを学んだことが、のちに役に立ったと思っています。
卒業後に帰国してからはアルバイトをしつつ、父のアトリエで作品を描いたり…という生活をしながら、将来を考えあぐねていました。絵で身を立てる、という目標だけは定まっていたものの、イラストなのか漫画なのか絵画なのか、何を描きたいのか固まっていなかったのです。そんなある日、中学時代の落書きが目に入り、いじって猫のキャラクターを描いみたら、それが父の目に留まりました。「お前の描くキャラクターはいいな。それ一本で行け」と本当に久々に、褒められたんです。この時は「父の言葉」というより、「プロの言葉」として褒められたのが嬉しくて、素直に「よし、やってみよう」と思いました。この日から、キャラクターデザイナーとしての自分の立ち位置が定まった気がします。
さまざま企業や団体からマスコット等のデザイン依頼を受けていますが、私のスタイルは「余計なものはそぎ落とす」引き算型。マスコットはシンプルなほうがメッセージが強く伝わると思うので、いかにポイントを引き立たせるかを肝としています。例えば東京オリンピック公式マスコットキャラクターに選ばれた「ミライトワ」。最初はチョンマゲにしようとかいろんなアイデアがあったんですよ。しかし、ポイントは「市松模様」だと。これを最大限際立たせるデザインにするために、どんどん引き算をしていって今の姿に落ち着きました。シンプルであればあるほど、デザインの力が発揮されると思っています。
実は今、博多人形師を目指したいと思い育成塾に通っているんです。そもそもキャラクターをソフトビニール人形などの3次元化することは好きだったのですが、それとはまったく別に伝統工芸としての博多人形にも興味を惹かれていました。まずは伝統に敬意を払って、童ものや美人ものなど、基本と言われるものをしっかりと作れるようになりたいですね。諸先輩方にそれらを認めてもらえるようになったら、自分のキャラクターの要素を加えるなど、新しい風を伝統工芸の世界にも吹かせられたらと、夢見ています。目指せ、与一賞!…なんて言ったら、怒られちゃいますかね?(笑)。
(文・上田瑞穂)
プロフィール
1974年、福岡市出身。中村学園三陽高校、カリフォルニア州カブリロカレッジ大学を卒業したのち、帰国後は福岡でフリーのキャラクターデザイナーとして活躍。自身がデザインした「ミワイトワ」と「ソメイティ」が、2020年東京オリンピック・パラリンピックの公式マスコットキャラクターに選出された。父親はイラストレーターの谷口富。