#28 門田提灯店 門田 光太郎(かどた こうたろう)
明治28年に創業した門田提灯店の5代目として生まれました。3兄弟の長男であるため、小さい頃からなんとなく自分が店を継ぐんだろうなと漠然と思っていましたね。生まれたのも育ったのも、この川端商店街。学校から帰ってくると両親や職人さんたちが毎日出迎えてくれ、サラリーマン家庭で育つ友人たちとは環境が違うことをうっすらと感じていました。
中学生になり、山笠の下働きを始めるようになったころでしょうか。各流の提灯を全てうちが作っていることを知り、徐々にこの町に必要とされる家業であることを理解し始めました。それでも思春期にはやはり「これしか道はないのかな」なんて考えたりもして、大学は東京へ。一度抜け出してみたかったんだと思います。外に出て初めて知ることも多く、在京中に改めて福岡の町の良さに気づいたところもありますね。卒業後に祖父の体調が思わしくないと聞いたときには、迷いなく福岡に戻ろうと思いました。長男である責任感とともに、町に根差した家業を絶やしてはいけないと強く感じたんです。絶対になくしてはいけないという使命感もあり、自発的に戻ってきて継ぐ決心をしました。
とはいえ実際に入社して内情を知ると、やはり厳しい面も目の当たりにしました。昔は盆提灯を各家庭で用意するのが当たり前でしたが、そうした風習も薄くなり、お盆の売り上げは激減しています。これまでと同じやり方では、未来は見えない。どうやって新しい需要を生み出していくのか、知恵を振り絞らなくては生き残れません。その一案として、川端商店街を通る観光客に向けて、数年前から提灯の絵付け体験を始めました。最初のお客様はイタリアから来たデザイナー集団でしたが、我々には想像もつかない色遣いとデザインで素敵な提灯を仕上げられて、驚きましたね。絵付けも「表と裏」の2面ではなく360度全面使うなど、発想が自由なんですよ。提灯という日本古来の素材を使って、自由にデザインを楽しむ…これは、今後海外に展開できるツールになるのではないかと手ごたえを感じました。
最近では同業者や同じような伝統産業で、自分と同年代の後継者と出会うことも増えてきました。皆さんそれぞれに新たなチャレンジをされていて、刺激を受けることも多い。海外に目を向けていたり、伝統とテクノロジーの融合に挑んでいるのを見ると、自分も負けていられないなと思いますね。提灯作りに欠かせない木型の職人が減っているのであれば3Dプリンターで作れないかと考えたり、海外で日本式居酒屋を営む人に提灯の装飾を提案したりと、これからは受け身ではなく自分から積極的に発信していきたい。自分の家業だけではなく、さまざまな人と協力して、伝統産業の可能性を広げていきたいと考えています。
中学生になり、山笠の下働きを始めるようになったころでしょうか。各流の提灯を全てうちが作っていることを知り、徐々にこの町に必要とされる家業であることを理解し始めました。それでも思春期にはやはり「これしか道はないのかな」なんて考えたりもして、大学は東京へ。一度抜け出してみたかったんだと思います。外に出て初めて知ることも多く、在京中に改めて福岡の町の良さに気づいたところもありますね。卒業後に祖父の体調が思わしくないと聞いたときには、迷いなく福岡に戻ろうと思いました。長男である責任感とともに、町に根差した家業を絶やしてはいけないと強く感じたんです。絶対になくしてはいけないという使命感もあり、自発的に戻ってきて継ぐ決心をしました。
とはいえ実際に入社して内情を知ると、やはり厳しい面も目の当たりにしました。昔は盆提灯を各家庭で用意するのが当たり前でしたが、そうした風習も薄くなり、お盆の売り上げは激減しています。これまでと同じやり方では、未来は見えない。どうやって新しい需要を生み出していくのか、知恵を振り絞らなくては生き残れません。その一案として、川端商店街を通る観光客に向けて、数年前から提灯の絵付け体験を始めました。最初のお客様はイタリアから来たデザイナー集団でしたが、我々には想像もつかない色遣いとデザインで素敵な提灯を仕上げられて、驚きましたね。絵付けも「表と裏」の2面ではなく360度全面使うなど、発想が自由なんですよ。提灯という日本古来の素材を使って、自由にデザインを楽しむ…これは、今後海外に展開できるツールになるのではないかと手ごたえを感じました。
最近では同業者や同じような伝統産業で、自分と同年代の後継者と出会うことも増えてきました。皆さんそれぞれに新たなチャレンジをされていて、刺激を受けることも多い。海外に目を向けていたり、伝統とテクノロジーの融合に挑んでいるのを見ると、自分も負けていられないなと思いますね。提灯作りに欠かせない木型の職人が減っているのであれば3Dプリンターで作れないかと考えたり、海外で日本式居酒屋を営む人に提灯の装飾を提案したりと、これからは受け身ではなく自分から積極的に発信していきたい。自分の家業だけではなく、さまざまな人と協力して、伝統産業の可能性を広げていきたいと考えています。
(文・上田瑞穂)
プロフィール
1990年生まれ、門田提灯5代目。東京の大学を卒業後、家業に入社。絵付け体験など、新たな取り組みを生み出し、伝統業のすそ野を広げようと奮闘中。山笠にも参加し、大黒流の赤手拭を務める。