明治日本の産業革命遺産
九州・山口と関連地域 <3>
(官営八幡製鐵所(2))
製鐵所の急激な成長を支えた由緒ある施設
官営八幡製鐵所の建設に必要な鍛造品*1を製造するために建設されたのが、旧鍛冶工場です。ドイツのグーテホフヌンクスヒュッテ社(GHH.社)による設計と鋼材を用いて建設され、製鐵所の創業よりも1年早い1900(明治33)年に完成。当時としては極めて大型の350トン水圧プレスが設置されていました。
修繕工場もまた、GHH.社による設計と鋼材を用いて建設され、1900(明治33)年に完成。機械の組み立てや修繕など、製鐵所における機械工場群の中心的な施設として建設されました。「現存する鉄骨建築物としては国内最古で、110年以上経った今も現役なんですよ」と、北九州市・世界遺産登録推進室長の井上保之さんは改めて目を見張ります。修繕工場は竣工当時、桁行(建物の長さ)は50mでしたが、製鐵所の規模拡大に伴い1917(大正6)年までに3回、140mの長さにまで増築されています。井上さんは「増築される過程で、設計や鋼材がドイツ製から官営八幡製鐵所製へと代わっており、八幡製鐵所の発展過程をうかがえます」と建物の重要性を語ってくれました。
“生きている世界遺産”として市民の誇りに!
修繕工場と同じく、今も稼働する遠賀川水源地ポンプ室。第一期拡張工事に伴う工場用水不足を補うため、1910(明治43)年に操業を開始しました。現在も、製鐵所の鉄鋼生産に必要な約3割の工場水を送水しています。井上さんは、「『明治日本の産業革命遺産』には、官営八幡製鐵所をはじめ多くの稼働中の工業関連施設が含まれています。これらが世界遺産に登録されれば、日本では初めてのことであり、世界にもあまり例がありません。これをきっかけに、日本の近代化を牽引し、今も産業都市であり続ける北九州地域の名が国内外に知られ、歴史、そして『今』を改めて知っていただくことを期待しています」と、“生きている世界遺産”誕生への青写真を描きます。
*1 鍛造品・・・金属素材などを、高温の状態で外力を加えて変形させた加工品のことで、強度に優れている。
次号は一旦、「明治日本の産業革命遺産」を離れ、同じ福岡県内の世界遺産候補である「宗像・沖ノ島と関連遺産群」を取り上げます。
-
官営八幡製鐵所修繕工場、
官営八幡製鐵所旧鍛冶工場福岡県北九州市八幡東区大字尾倉 ほか遠賀川水源地ポンプ室福岡県中間市土手ノ内1お問い合わせ
093-582-2922
(北九州市総務企画局世界遺産登録推進室)
※全施設非公開施設であるため、敷地内に立ち入ることはできません
-
北九州の工場群や洞海湾、関門海峡を一望できる。夜景の美しさは「新日本三大夜景」に選定されるほど。
住所:福岡県北九州市八幡東区大字尾倉1481-1 営業: ケーブルカー運行時間
平日 10:00~上り最終17:20 土・日・祝 10:00~上り最終21:20 ※スロープカーはケーブルカーの発着に接続 料金: 大人1200、小人600
(ケーブルカー・スロープカー往復通し券)お問合わせ:093-671-4761(帆柱ケーブル) アクセス: JR八幡駅~帆柱ケーブル山麓駅間を無料シャトルバスが運行(土・日・祝のみ)
八幡製鐵所遠賀川水源地ポンプ室(非公開)から、車で約5分の場所にある都市公園。四季折々の木や花を楽しめ、地域住民の憩いの場に。約15万㎡の広さを誇る園内には、埴生神社や古墳群、アスレチックなどがあるほか蒸気機関車も保存されている。
住所:福岡県中間市大字垣生字八ッ廣428 お問合わせ:福岡県中間市都市整備課 093-246-6261 アクセス:JR筑豊本線(福北ゆたか線)「筑前垣生駅」より徒歩約5分
▲現在の修繕工場
建屋の南側は赤煉瓦で造られ、創業当時の面影が残る
▲現在は、製鐵所の史料室(非公開)として使用されている旧鍛冶工場
▲遠賀川水源地ポンプ室
建屋の外観は竣工時の雰囲気を残している
写真提供:
新日鐵住金株式会社
八幡製鐵所