宗像・沖ノ島と関連遺産群
<2> (宗像大社)
海によって結ばれた一体的な信仰空間
4世紀後半から9世紀末、「沖ノ島」では航海の安全と対外交流の成就を願って国家的祭祀が営まれていました。島内の巨大な岩を対象に祭祀は始まりましたが、やがて大島と九州本土でも祭祀が営まれます。これら3カ所の祭祀遺跡が3つの宮へと発展し、「宗像大社」を形成しました。「宗像大社」と聞けば交通安全の神様で知られる九州本土の社殿をイメージする方が多いと思いますが、実は海を介する3つの宮によって広大な境内域が形成されているのです。
宗像大社に祭られている「宗像三女神」(田心姫神(たごりひめのかみ)、湍津姫神(たぎつひめのかみ)、市杵島姫神(いちきしまひめのかみ))は、海の守り神として『古事記』『日本書紀』にも登場しています。田心姫神が祭られている「沖津宮」は沖ノ島全体がその境内地であり、現在も厳しく入島が制限されています。
湍津姫神を祭る「中津宮」は、「沖ノ島」から49kmほど離れた、九州本土との間に位置する大島にあります。大島の北側の海辺には、はるか彼方の神の島「沖ノ島」を拝むために「沖津宮遙拝所」が置かれています。
市杵島姫神を祭るのは、九州本土の「辺津宮」。社殿の背後の山にある下高宮祭祀遺跡(高宮祭場)は、宗像三女神降臨の地とも言われる古代の祭祀の場です。
今もなお地元に根付く「沖ノ島」への信仰
宗像大社では毎年10月1日に、宗像三女神にちなんだ「みあれ祭」(▲5)が行われています。「島に対する信仰は現在にまで受け継がれています。我々が何気なく参拝している『宗像大社』ですが、土台になっているのは古代から続く海に生きる人々の信仰なんですよ」と、福岡県世界遺産登録推進室の野木雄大さん。この沖ノ島、大島、そして九州本土の宗像を結ぶ地域には、広大な信仰空間と信仰の発展を物語る資産が広がっています。
次号では「沖ノ島」での祭祀を執り行った豪族、宗像氏が築いた「新原(しんばる)・奴山古墳群(ぬやまこふんぐん)」を紹介します。
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宗像・沖ノ島と関連遺産群に関するお問い合わせ
住所:〒812-8577
福岡市博多区東公園7-7
電話:092-643-3162
(福岡県世界遺産登録推進室)
【中津宮】
住所:福岡県宗像市大島1811
【辺津宮】
住所:福岡県宗像市田島2331
【沖津宮遙拝所】
住所:福岡県宗像市大島
※沖ノ島(沖津宮)へは、通常上陸できません。
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白砂青松*1100選に選出された「さつき松原」に隣接し、玄界灘を一望できる。玄界灘で水揚げされた魚介類をはじめ、宗像の農産物や加工品を販売。おふくろ食堂「はまゆう」では、地元の漁師・農家料理を味わえる。
*1 白砂青松・・・日本の美しい海岸風景
住所:福岡県宗像市江口1172 営業:9:00~17:00(10~5月)、
8:30~17:00(6~9月)
休み:第4月曜日お問合わせ:0940-62-2715
(株式会社まちづくり宗像)アクセス:
JR「東郷」駅下車→「JR東郷駅前」より西鉄バス「神湊波止場行」乗車→「牟田尻」下車 徒歩約15分。午前中3便のみ道の駅乗り入れ便あり
▲2 中津宮。祭祀遺跡が残る御嶽山とは参道で結ばれている。
▲3 辺津宮。宗像大社の中心として多くの参拝者で賑わう。
▲4 沖津宮遙拝所。空気の澄みきった日には沖ノ島を見られる。
▲5 みあれ祭