#1 宗教改革 ♪マルチン・ルター/賛美歌「神はかたき砦」 - アクロス福岡
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歴史を彩った名曲たち

#1 宗教改革 ♪マルチン・ルター/賛美歌「神はかたき砦」

宗教改革

私たちが音楽を聴くときに讃美歌を意識することは少ないかもしれない。しかし、ヨーロッパのキリスト教社会では隅々に至るまで讃美歌が浸透している。この「神はかたき砦」は、わが国では「神はわがやぐら」という題でも知られているプロテスタント・ルター派の讃美歌で、この讃美歌の作者はマルチン・ルターである。
この讃美歌は、メンデルスゾーンが作曲した交響曲第5番「宗教改革」の第4楽章のモチーフになっていて、最初は厳かに、そして崇高な響きで奏される。また、ワーグナーも「皇帝行進曲」でこれを用いており、普仏戦争での勝利に賛美している。いずれもルターへの崇敬が伺える。
16世紀前期にルターがカトリックに反旗を翻してヴィッテンベルクの教会に95か条の質問状を貼りだしたエピソードはよく知られている。ルターが新たな宗教組織を立ち上げたが、その際に緊急に整備しなければならなかったのが新しい讃美歌であった。ルターは自ら讃美歌の作詞を行い、作曲も手掛けた。ルター派では、宗教改革記念日にこの讃美歌が歌われ、バッハが1725年に作曲したカンタータ第80番「神はかたき砦」もその一つである。ルター派では讃美歌集の編纂のために、ルター自らが作詞・作曲するほかに、カトリックの讃美歌を替え歌にしたり、同じプロテスタントのカルヴァン派の讃美歌を替え歌にしただけではなく、当時の世俗歌曲を替え歌にしたものもある。世俗歌曲の替え歌で有名なのが受難の讃美歌「血潮にまみれし主の御頭」で、ハンス・レオ・ハスラーの恋歌「わが心恋に乱れて」が元歌である。

ルター
マルティン・ルター
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。