#2 オペラの始まりと国際政治 17世紀初め ♪ペーリ/オペラ「エウリディーチェ」 - アクロス福岡
Language 検索
  • Facebook
  • Instagram
  • YouTube
  • Twitter

歴史を彩った名曲たち

#2 オペラの始まりと国際政治 17世紀初め
♪ペーリ/オペラ「エウリディーチェ」

宗教改革

バロックの始まりを宣言したのがペーリとカッチーニが作曲したオペラ「エウリディーチェ」である。ちょうど1600年に上演されたこの作品は、その当時の国際政治を色濃く反映していた。
このオペラが上演されたのは、フィレンツェのメディチ家のマリー・ド・メディシスとフランス国王アンリ4世の結婚式の場においてである。この結婚式は1600年10月5日に、まずフィレツェでアンリ4世の代理人が派遣されて結婚式が行われた。この結婚式を仕切ったのは、フェルディナンド1世・デ・メディチ(トスカーナ大公)である。彼は姪マリーとアンリ4世との結婚をフランス宮廷との結びつきを強める政略として位置付けていた。殖産興業に努め、農地開墾を手掛けるなど、実業家として大いにらつ腕をふるったフェルディナンドは、結婚式に伴うさまざまな出し物や芸術を重要な外交手段として用いた。
この時期のフランスは極端で莫大な負債を抱えていた。この結婚に際してフランスが要求した持参金は100万スクードという巨額であった。交渉の末、60万スクード(100億円程度)に減額されて、マリーはフランス王妃として嫁ぐことになる。それでもメディチ家にとって意味のある結婚であった。この結婚式の祝賀行事として上に述べたオペラのほかに、カッチーニの「チェファーロの誘拐」が上演された。この結婚以前にフランス王アンリ2世と結婚したカトリーヌ・ド・メディシスは、アマティにヴァイオリン製作を依頼し、これがヴァイオリン製作の源流となった。

マリー・ド・メディシス
マリー・ド・メディシス
アンリ4世
アンリ4世
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。