#4 ストラディヴァリウス ♪コレッリ/トリオ・ソナタ - アクロス福岡
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歴史を彩った名曲たち

#4 ストラディヴァリウス ♪コレッリ/トリオ・ソナタ

メインイメージ

ヴァイオリンの登場は音楽の世界を大きく変えた。16世紀中ごろ、イタリアのクレモナのアンドレア・アマティはこれまでの弦楽器とは全く異なる楽器を制作する。この楽器に注目したのが、フランス国王アンリ2世に嫁いだフィレンツェのメディチ家の出、カトリーヌである。カトリーヌは息子のシャルル9世とともにアマティに39丁ものヴァイオリンやヴィオラ、チェロの制作を依頼する。これまでのヴィオール族のひなびた音色とは異なる燦然と輝くような響きのヴァイオリン族は、その後、音楽史の舞台に躍り出る。このアマティ一族の工房からストラディヴァリウスやグァルネリなどの名工が輩出し、ヴァイオリン音楽が隆盛を極める。
この新しい楽器にふさわしい作品を手掛けたのがアルカンジェッロ・コレッリ(1653ー1713)で、彼は30年戦争の覇者であるスウェーデンの女王クリスティーナの庇護を受けた。クリスティーナは学問と芸術をこよなく愛し、デカルトに哲学を師事したことでも知られる。コレッリは、「合奏協奏曲」と「トリオ・ソナタ」というバロック時代でもっとも重要な協奏曲と室内楽の作曲様式を生み出した。これらの音楽の主役はヴァイオリンである。コレッリの「作品1」が12曲からなる「トリオ・ソナタ」で、前述のクリスティーナに献呈された。ヴァイオリン2本とチェロという編成に、当時の演奏習慣から通奏低音の楽器が加わる。多くはチェンバロであるがオルガンも用いられた。この通奏低音は、低音部の響きを支えるために行われた演奏習慣で、トリオ・ソナタは計4人で演奏される。このトリオ・ソナタはバロック時代の代表的な室内楽のジャンルとなり、バッハも作品を手掛けている。

作業風景
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。