#10 3月革命とイタリア独立蜂起 ♪ヴェルディ/ レニャーノの戦い - アクロス福岡
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歴史を彩った名曲たち

#10 3月革命とイタリア独立蜂起
♪ヴェルディ/ レニャーノの戦い

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1848年3月、ウィーンでは列強の均衡外交と厳しい言論統制を政治手法としたメッテルニヒ体制に反対する3月革命が勃発し、メッテルニヒは国外逃亡を余儀なくされる。この革命は、これまでオーストリア・ハプスブルク家の支配下にあったボヘミアやハンガリー、北イタリアにも及び、各地で独立蜂起がおこる。
ウィーンでの3月革命の報はこれまでオーストリアに統治されていた北イタリアのロンバルディア地方にももたらされ、3月17日ミラノの人びとは蜂起する。この蜂起にいち早く共鳴してパリから急行したのがジュゼッペ・ヴェルディである。しかしイタリアのサルデーニャ軍がオーストリア軍に敗れると、ヴェルディはともに戦った詩人のマメーリや、青年イタリア党の党首マッツィーニらとともにミラノから逃れる。ヴェルディの名前(VERDI)は、イタリア独立で中心的な役割を担った「イタリアの王、ヴィットーリオ・エマヌエーレ(Vittorio Emanuele Re D'Italia)」の頭文字と同じであることから、彼はイタリア独立運動の象徴として、大きな役割を担っていく。この3月革命後の独立運動の際に作曲されたのが愛国賛歌《ラッパの響き》である。これは同志の詩人マメーリの詩に作曲した賛歌である。
北イタリアのロンバルディア地方を再びオーストリア統治下においたラデツキー将軍にたいするイタリア人の感情を最もよく反映しているのが、ヴェルディのオペラ《レニャーノの戦い》である。このオペラは、12世紀に侵攻してきた神聖ローマ皇帝フリードリヒ一世バルバロッサ(赤髭王)の軍隊をロンバルディア同盟軍がレニャーノで迎え撃ち、勝利をおさめた「レニャーノの戦い」という史実を題材にしている。主人公で致命傷を受けた指揮官アリーゴがイタリアの旗に接吻して息絶えるこの筋立てはイタリアの愛国精神を大きく高揚させた。ちなみにイタリアを制圧したラデツキー将軍をたたえてヨハン・シュトラウス1世が作曲したのがニューイヤー・コンサートの定番の《ラデツキー行進曲》である。

ルドルフ大公
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。