#19 1830年7月革命 ♪ベルリオーズ/レクイエム - アクロス福岡
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歴史を彩った名曲たち

#19 1830年7月革命 ♪ベルリオーズ/レクイエム

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1830年7月革命の7年後の1837年、ベルリオーズは7月革命での犠牲者を追悼するために、同年7月28日に開催予定の式典に、内務大臣ド・ガスパランから「レクイエム」の作曲の委嘱を受けた。7月革命は、きわめて復古的な思想を持つシャルル10世が自由主義思想にたいする厳しい言論統制をしき、亡命貴族が失った財産を補償するための10億フラン法を制定したことから人々の不満が爆発して起こった革命であった。この革命が勃発したとき、ベルリオーズは折しも応募した「ローマ大賞」の作曲コンクールで作品を作曲中であった。彼の「自伝」によると、会場の建物に砲弾が着弾する騒然とした中で、ベルリオーズは作品を書き終えるとすぐにこの革命にみずから参加し、群衆とともに「ラ・マルセイエーズ」を歌った経験をもっていた。
「レクイエム」は1837年6月に完成し、上演のための練習をする運びとなった。しかし、彼によると「政治的な理由」でこの年の式典では音楽は用いないことになる。そして作品は同年12月5日のコンスタンティノープル攻略で戦死したダムレモン将軍への追悼式典で初演された。
《レクイエム》の魅力は何といってもその編成の壮大さにある。ヴァイオリン50名、ヴィオラ20名、チェロ20名、コントラバス18名の弦楽器群にフルート4本、オーボエ、コーラングレ各2本、クラリネット4本、ファゴット8本、ホルン12本、ティンパニ8対、それに大太鼓、タムタム、シンバル10対というオーケストラと、その周囲を4つの小吹奏楽団がとりまき、ソプラノとアルト計160名、テノール120名、バス140名、計400名を越える大合唱が加わる。天地を轟かせる大音量で奏されるこの作品は、フランス革命時に演奏された革命式典の音楽の伝統を継承している。「レクイエム」で特筆すべきは第6曲「ラクリモサ(涙の日)」で、雷鳴を思わせるティンパニの表現の斬新さは特筆すべきである。
1840年ベルリオーズは7月革命10周年記念式典にさいし、再び作曲依頼を受け、吹奏楽と合唱による3楽章からなるこれも感動的な《葬送と勝利の交響曲》を作曲する。

ベルリオーズ
西原稔 山形県生まれ。東京藝術大学大学院博士課程満期修了。現在、桐朋学園大学音楽学部教授。18、19世紀を主対象に音楽社会史や音楽思想史を専攻。「音楽家の社会史」、「シューマン 全ピアノ作品の研究 上・下」(ミュージック・ペン・クラブ賞受賞)、「クラシック 名曲を生んだ恋物語」、「クラシックでわかる世界史」などの著書などがある。