#11 直方駅 JR九州
直方市の中心部に
JR・私鉄・3セク、
3つの鉄道駅
郷土の英雄像が街を見守る
直方市は筑豊平野のほぼ中央に位置し、江戸時代前半、福岡藩支藩の城下町に。明治時代になると筑豊炭田の石炭集積地として発展。直方市には3つの駅が存在していて、その中心駅はJR筑豊本線・直方駅だ。筑豊興業鉄道の駅として1891年に開業。機関区や操車場も開設され、石炭輸送に大勢の鉄道マンが携わっていた。直方で暮らしたことがある林芙美子は「直方は明けても暮れても煤(すす)けて暗い空であった」と放浪記に記しているほど、次々に発車して行く石炭列車を引く蒸気機関車の煙で空が真っ黒になっていたようだ。現在、朝夕は北九州市や福岡市への通勤・通学客、昼間は買い物などの所用客が利用している。黒崎-折尾-直方-桂川-博多を結ぶ路線は"福北ゆたか線"の愛称を持っていて、1日上下193~195本の列車が、昼夜問わず引っ切り無しに発着している。もうひとつの駅はJR駅に隣接する平成筑豊鉄道の直方駅。同鉄道は国鉄から転換した第3セクターで、ディーゼルカーが田川伊田駅、行橋駅を結んでいる。3つめの駅は、筑豊電気鉄道・筑豊直方駅。黒崎駅前-筑豊直方を結ぶ同鉄道線の終着駅で1959年の開業。西鉄・北九州線の一部が乗り入れたことから路面電車が走る専用線に。現在は最新鋭の低床電車も行き来し、LRT=次世代型路面電車の雰囲気を醸し出している。筑豊直方駅はJR駅と路線バスで2停ほどの距離があり、2階のホームは、行き止まり式構造。これは飯塚市方面へ延伸する計画があり、高架のまま筑豊本線をオーバークロスさせるためだった。計画は頓挫したが、駅はそのまま住宅地の中にたたずんでいる。
再び、JR直方駅に戻ってみる。直方駅の駅舎は2011年まで、明治時代に建築されたネオ・バロック様式の歴史ある建物だったが、8年前に現代的な橋上駅舎に生まれ変わった。一部のホーム屋根に旧駅の面影が見て取れる。駅舎前で存在感を示すのが直方出身の元大関・魁皇(かいおう)関の銅像。高さ2m38cm、重さ480kgの現役時代をほうふつさせる堂々とした像だ。直方-博多には特急「かいおう」が1日2往復しており、引退しても、郷土の英雄を名乗る列車が今も元気に走り続けている。
(文・写真 東 淳二郎)
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