#16 筑前内野駅・筑前山家駅/JR九州
1日数本の列車しか
発着しない
福岡都市圏ローカル線駅
鉄道難所、冷水峠を分ける両駅
日本の鉄道は、山々を貫き、峠を制することに苦労し、心血を注いできたといえる。北部九州有数の難所は、筑豊本線の冷水(ひやみず)峠だ。この峠を分ける駅が筑前内野、筑前山家(やまえ)で、内野、山家地区は長崎街道の宿場町として栄えた。長崎街道は小倉と長崎を最短距離で結ぶことに加え、福岡・博多の大きな街を迂回でき、1612年に冷水峠を越える道が整備された。きつい峠越えの途中、多くの旅人が冷水川の清流で一服したことが峠名の由来。峠には石畳の道が、筑前内野駅近くには旅籠や茶屋の跡が残されている。筑豊本線は若松駅と原田駅を結ぶ66.1kmの路線。桂川駅-原田駅20.8kmは原田線という名称で、2018年7月豪雨の影響で運休が続き、2019年3月9日に復旧。筑前内野駅は長尾駅(現・桂川駅)と結ぶ長尾線の駅として1928年の開業。山小屋風の小さな駅舎に、ホームは1面1線。駅舎内に手書きの時刻表が置いてあり、間近の小学校から子供たちの歌声が聞こえてきた。筑前内野駅を出ると、冷水峠の1000分の25パーミル(1000m進むと25m登る)の急勾配が続き、3,286mの冷水トンネル内で頂上に。その後は急勾配の下りが筑前山家駅まで続く。筑前山家駅は原田駅まで開通した1929年に営業開始。駅舎は瓦屋根の町家風で、駅前は国道200号。1面1線ホームは少しカーブしている。駅横には西鉄路面電車とバスが保存されている。
現在、列車本数は極端に少ないが、1970年代まではディーゼル特急「かもめ」(京都-佐世保)、客車急行「天草」(京都-熊本)など優等列車に加え、寝台特急が走っていたことも。当時は、蒸気機関車全盛で、長大な列車や貨物は2台連ねてけん引していた。なかでも、急行「天草」は先頭のディーゼル機関車だけではパワー不足で、補助の蒸気機関車が後押していた。SLブームも重なり、たくさんの鉄道ファンが冷水峠に赴き、撮影を行っていたことは懐かしい思い出だ。
原田線は1日8~9本の列車しか行き来してない、福岡都市圏にある稀有なローカル線。1両編成、昭和生まれのディーゼルカーに乗って、峠を越える身近な田舎旅が味わえる。
(文・写真 東 淳二郎)
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