旧伊藤伝衛門邸〜飯塚市幸袋〜 - 風景ふくおか - アクロス福岡
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旧伊藤伝衛門邸〜飯塚市幸袋〜

白壁土蔵のお菓子屋さんや醤油店が立ち並び、江戸時代の宿場町を探索しているようなワクワクした気分になります。
石炭王伊藤伝衛門の軌跡をたどって、まずは飯塚市歴史資料館を訪ねた。2階の展示室には伝衛門とその妻、柳原白蓮こと樺子に関する展示コーナーがある。写真や年表、伝衛門のタキシード、生活に使った様々なものなど、貴重な資料を学芸員の樋口さんに説明していただいた。一代で石炭王の地位を築いた伝衛門は「でんねむさん」の愛称で親しまれ、学校建設や奨学金制度の設立、遠賀川の治水に尽力するなど地域の発展にも貢献した。白蓮は華族の血を引く歌人で、約10年間の結婚生活の後に宮崎龍介氏と恋に落ち、伊藤家を去った。

「伝衛門と白蓮、どちらがお好きですか?」と樋口さんに聞かれる。訪れる人は、そのどちらかに偏ることが多いという。石炭王の威厳のある風貌に優しい眼が特徴の伝衛門と、たおやかな白蓮の写真に見送られて、二人のかつての住まいを見せていただくべく旧伊藤邸のある幸袋へと向った。

歴史資料館から車で約15分。旧長崎街道に面してそびえる長屋門をくぐって、表玄関のすぐ左手はこの屋敷唯一の洋間である応接室。イギリス製のステンドグラスを上部にはめ込んだ入口ごしに、マントルピースが出迎えてくれる。冬には石炭をくべたという暖炉の脇には、伊藤家の家紋をあしらった石炭入れが置いてある。約50メートルある畳敷きの廊下の天井は、平らなのに傾斜して見える「矢羽根天井」、部屋ごとに違う襖の引き手、茶室、竹を枡形に編んだ天井。贅をつくした造りながら、派手ではなく、全てが洗練された美に満ちている。離れの事務所として使われていた建物は、「白蓮館」として資料館および土産物販売店になっている。

伊藤邸は増改築を繰り返しながら、生き物のように形をかえてきた建物だ。今その成長を止め、炭鉱の栄華が歴史の一部へと成就したのを実感させてくれる。あの白蓮さえも再び迎え入れたこの屋敷に、炭鉱王の懐の大きさを感じた。その贅をめでながら、二人の人生にぜひ思いをなぞらえていただきたい。

ントルピース 伊藤邸の応接間。
▲マントルピース 伊藤邸の応接間。
アール・ヌーヴォー調のマントルピースには、かわいらしい模様のタイルがあしらわれている。

  • お問い合わせ

    福岡県飯塚市幸袋300番地
    TEL:0948-22-9700
  • お知らせ

    旧伊藤伝衛門邸
    開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
    休館日:火、水曜日(祝日の場合は開館)、年末年始(12月29日〜1月3日)

  • お問い合わせ

    福岡県飯塚市柏の森959番地の1
    TTEL:0948-25-2930
  • お知らせ

    飯塚市歴史資料館
    開館時間:9:30〜17:00(入館は16:30まで)
    休館日:毎週月曜、祝祭日の翌日、年末年始(12月29日〜1月3日)

  • 絵  ほあし・よしゆき
    自然の風景に関心が薄く、人間の創った[物]に対して濃い。人の[営み]の象徴としての[街角]を多く描く。営みの延長としての[食べ物]にも執着心が強く、食べ・描き・造る・・・事にも熱心。その故もあって・・・糖尿。