第4回 草木染 — 色を染める、色を織る
色に対する憧れは人の根源的な特性だろうか。草木染めは、織物と同じくらい悠久の歴史をもつ。人は天然の色で暮らしを彩ってきた。しかし、化学染料に席巻されたいま、草木染めを趣味として楽しむ人はいても、職業とする人は少ない。草木の精で色を染め、色を織る匠を訪ねた。
福岡市西区生の松原の急坂を上り詰めたところに長尾さんの工房を兼ねた自宅はある。窓際の部屋から眼下に博多湾が広がり、正面に能古島が大きく見えた。
2年間勤めたスウェーデンの織物会社を辞め、帰国して求めた場所だ。周囲に自然林が残り、染料をとる草木はいくらでもあった。楊梅[やまもも]の樹皮からは、黄、茜からは赤、藍から青の染料が抽出でき、これに柿渋染めを加え、色に奥行きを出すのが長尾さん独自のテイストだ。
「染織の入門書はありますが、専門書は少ない。しかたなく、独自の経験で切り開いてきました」と話す。
長尾さんは多摩美術大学の染織デザイン科を卒業して、京都の西陣織の老舗である川島織物に勤めた。そこで車のシートやインテリア製品など工業製品の織物の企画開発を担当し、染織の基礎を身につけた。8年目に北欧のテキスタイルデザインに強く惹かれ、スウェーデンのシナサンド社に移籍した。
「北欧のモノづくりは、自然に囲まれた中で自分と向き合って、時間をかけて進められていた。これであれば日本でもできる。自分のテーマでモノづくりをしたくて帰国。福岡に戻り自然と共生をテーマに、オリジナルブランド商品を作り始めました。」
購買層の幅が広がっている。「個性がないのは駄目だが、自分を出し過ぎてもいけない。奇をてらわず、ベーシックなモノ作り」の結果だろう。
長尾さんの作品は、草木染めだけに、どれも柔らかな暖か味を感じさせるが、単色のものは少ない。複数の色が混ざり合っても濁らず、深みを感じさせる。
それは重ね染めと日光に当てて乾かす時間も変化をつけているからだ。所々に絞りや色ムラがアクセントとして効果的に配されているのもユニークだ。
それでも周期的に壁にぶち当たるそうだが「基本に立ち返り、丁寧にモノづくりをする。手抜きをせず、染料を惜しまないこと」を心がけている。
福岡市西区生の松原の急坂を上り詰めたところに長尾さんの工房を兼ねた自宅はある。窓際の部屋から眼下に博多湾が広がり、正面に能古島が大きく見えた。
2年間勤めたスウェーデンの織物会社を辞め、帰国して求めた場所だ。周囲に自然林が残り、染料をとる草木はいくらでもあった。楊梅[やまもも]の樹皮からは、黄、茜からは赤、藍から青の染料が抽出でき、これに柿渋染めを加え、色に奥行きを出すのが長尾さん独自のテイストだ。
「染織の入門書はありますが、専門書は少ない。しかたなく、独自の経験で切り開いてきました」と話す。
長尾さんは多摩美術大学の染織デザイン科を卒業して、京都の西陣織の老舗である川島織物に勤めた。そこで車のシートやインテリア製品など工業製品の織物の企画開発を担当し、染織の基礎を身につけた。8年目に北欧のテキスタイルデザインに強く惹かれ、スウェーデンのシナサンド社に移籍した。
「北欧のモノづくりは、自然に囲まれた中で自分と向き合って、時間をかけて進められていた。これであれば日本でもできる。自分のテーマでモノづくりをしたくて帰国。福岡に戻り自然と共生をテーマに、オリジナルブランド商品を作り始めました。」
オリジナル性を育てる
主に国産の絹や麻を素材に長尾さんが染めて織った布は、布とトートバッグやアイリッシュリネンの服、テーブルウエアなど、暮らしに身近な商品として世に出される。製品はこれまで主に有名百貨店などの展示会で販売されてきたが、常設の直営店として「西新エルモール・プラリバ」3階に「柿渋染め染織の店 長尾」も加わった。購買層の幅が広がっている。「個性がないのは駄目だが、自分を出し過ぎてもいけない。奇をてらわず、ベーシックなモノ作り」の結果だろう。
長尾さんの作品は、草木染めだけに、どれも柔らかな暖か味を感じさせるが、単色のものは少ない。複数の色が混ざり合っても濁らず、深みを感じさせる。
それは重ね染めと日光に当てて乾かす時間も変化をつけているからだ。所々に絞りや色ムラがアクセントとして効果的に配されているのもユニークだ。
それでも周期的に壁にぶち当たるそうだが「基本に立ち返り、丁寧にモノづくりをする。手抜きをせず、染料を惜しまないこと」を心がけている。
(文・安藤憲孝)
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お問い合わせ
工房
TEL:092-882-1417
FAX:092-882-2055
柿渋染めと染織の店長尾
TEL:092-846-0151
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お知らせ
柿渋染めと染織展
2007年7月9日(月)〜2007年7月15日(日)
天然の染料と天然の素材を使ったモダンな染織品揃い。
長尾さんご本人にも会えます。
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あんどう・のりたか
年甲斐もなく好奇心が強い。無論、全てにそうではないが、特にモノ作りの現場でいつの間にか身を乗り出している。創造の世界が新鮮に映る。衰えそうもない好奇心に当分、付き合っていくか…
▲長尾 浩介さん(51歳)
▲いろんな色に染め上げられた糸
▲落ち着いた風合いのトートバッグ