第5回 手仕事集団秋月風我人[ふうがじん] — 木と紙に向き合い、創作する個性派トリオ - 匠にであう - アクロス福岡
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第5回 手仕事集団秋月風我人[ふうがじん] — 木と紙に向き合い、創作する個性派トリオ

脚に特徴を持たせたテーブル(福田さんの作)
▲脚に特徴を持たせたテーブル(福田さんの作)
城跡、長屋門、武家屋敷など城下町のたたずまいをとどめ、筑前の小京都とも呼ばれる福岡県朝倉市秋月。観光地・秋月を拠点に木工、創作家具、手漉[す]き和紙とジャンルを越えた新進作家が創作活動を続けている。「手仕事集団 秋月風我人[ふうがじん]」を訪ねた。

メンバーは現在、木工轆轤[ろくろ]「工房調[しらべ]」の調正弘さん(51歳)、創作家具「木房秋月」の福田明彦さん(47歳)、手漉き和紙「筑前秋月和紙処」の井上賢治さん(42歳)のトリオ。各人独自の工房を構え、ジャンルは異なっていても、共通項は秋月を拠点に国産の天然素材を使って創作する若き作家という点だ。8年前の結成時は、この3人に陶芸家が加わって、木・紙・土で表現するカルテットだった。

「ふうがじんとはこの辺りの方言で、一風変わった人を指す言葉。普通は否定的に使われていますが、個性的でありたいという願いから名付けました」代表の福田明彦さんの説明に作家の初心がにじむ。

八女郡内の民芸家具メーカーを振り出しに、この道30年の福田さん。山に囲まれた環境が気に入り、秋月に移り住んで20年。「お客さまの好みや要望を取り入れた注文家具」を専らとする。

最年長の調さんは、28歳でサラリーマン生活に見切りをつけ、木工の世界に飛び込んだ。「会社では事務系の仕事。職人さんの生活を見て転職を決断した」と話す。宮崎県での修行を経た後、独立して20年を迎える。国産材を使って盆や茶托などの日用品をはじめペンダントなどの装飾品も手がける。

井上さんも脱サラ組だ。10年前、手漉き和紙の家業を継ぐためにサラリーマンを辞めて帰郷した。江戸時代の秋月は手漉き和紙の里で実家は明治9(1876)年創業の老舗。4代目の井上さんは、まだ現役の父親について主に書画用などの和紙を漉く。

それぞれ新境地を

秋月に伝わる手漉き和紙に木・土のコラボレーションを構想し、縁結びの労をとったのは旧甘木市(現、朝倉市)商工観光課。その旗揚げのグループ展が匠ギャラリーだった。以来、毎年、匠ギャラリーで作品を披露してきた。この他にも機会を捉えてグループ展を開催している。各人の作品とは別に、ひとつのモノを共同製作することを通して結束を図っている。

「洪水のように押し寄せる輸入品によって、廃業に追い込まれた仲間たちを何人も見てきた」調さんたち。「実用性に加え付加価値の高いものを追求せざるをえません」と話す。調さんが試みているのは「癒し」のエッセンスを加えた木工品だ。福田さんは装飾性の高い調度品に腕をふるう。井上さんは最近需要が伸びている住宅用壁紙に期待を寄せる。それぞれが新境地に挑んでいる。

匠ギャラリーでのグループ展は、今年で8回を迎える。
(文・安藤憲孝)

  • お問い合わせ

    工房 調
    TEL:0946-25-1959
    木房 秋月
    TEL:0946-25-1852
    筑前秋月和紙処 TEL:0946-25-0517
  • お知らせ

    手仕事集団 秋月風我人展
    〜和の線・洋の線〜
    2007年8月27日(月)〜2007年9月2日(日)
    和洋が混在する現代。
    3人の風我人が和の線、洋の線を表現する。

  • 絵・文  あんどう・のりたか
    年甲斐もなく好奇心が強い。無論、全てにそうではないが、特にモノ作りの現場でいつの間にか身を乗り出している。創造の世界が新鮮に映る。衰えそうもない好奇心に当分、付き合っていくか…
井上 賢治さん(42歳)
▲井上 賢治さん(42歳)
福田 明彦さん(47歳)
▲福田 明彦さん(47歳)
調 正弘さん(51歳)
▲調 正弘さん(51歳)
美しい曲線のマドラー(調さんの作)
▲美しい曲線のマドラー(調さんの作)