第11回 民芸家具 — 美しさ・使いやすさ・耐久性を追求 - 匠にであう - アクロス福岡
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第11回 民芸家具 — 美しさ・使いやすさ・耐久性を追求

定番の炉付きテーブル
▲定番の炉付きテーブル
福岡県大川といえば日本で有数の家具の生産地だが、大川家具とは一線を画し、隣接する佐賀市富士町の山中にギャラリー工房を構え、消費者の生の声を家具作りに反映させる。家具部門で初の「福岡県の名工」となった父親の薫陶を受け、この道16年。「美しく・使いやすく・耐久性の強い家具」づくりに打ち込む二代目の家具職人を訪ねた。

大川市下青木、有限会社木精舎の代表取締役・古賀孝司さんがその人。「最近は無駄なものをそぎ落とし、デザインはシンプルになってきました。その中にどこか自分らしいものを取り入れるように努力しています。最初の頃は意欲ばかりが先走り、父とよく衝突しました。今になって父が言っていたことが理解できます」

弟子入りした若き日々を振り返る。古賀さんの父、俊一さん(故人)は17の歳で大川の家具職人に入門。その後、東京の中央職業訓練校に入学し修了証とともに東京都知事の職業訓練指導員免許証を手に帰郷、31歳で独立したという伝説の匠だ。

その父親の仕事を小学生の頃から手伝ってきた。弟子入りの頃は、目新しさや他にないものばかりを求め、ことごとく父親に否定され、意欲を失った時期もあった。「それは誰もが一度通る道でした」と話す。

適材適所のハーモニー

主に引き出しなどの箱ものを手がけ、平成9(1997)年7月に開催された「大川家具総合展第8回ホームコントラクトコンペ」に出品した桃山時代のからくり箪笥で、中小企業庁長官賞を射止めた。翌10(1998)年3月に開催された協同組合大川家具工業会主催の「明日のために新製品開発コンクール」では、長いテーブルセットで福岡県家具工業組合とジャパンファニチャープレスクラブの優秀賞をそれぞれ、同年7月の「第9回ホームコントラクトコンペ」でもジャパンファニチャープレスクラブの優秀賞と、たて続けに受賞し自信と実力をつけてきた。

父親から製作の責任を任され木精舎を設立した平成13(2001)年、「作り手の独りよがりに陥らないために」とギャラリー工房を開設、家具を求めて訪れる客との会話の中から家具に寄せる消費者のニーズを探る。また、作り手の側からの家具の選び方などアドバイスも怠らない。「長年使う家具だから、奇をてらわず、飽きのこないシンプルなデザインが一番です」と、勧める。

常に「適材適所」を念頭に置いて製作に取り組む。固くて強い木は強度が求められる所に、柔らかくて軽い木は相応の所に、木目の美しい木、節の多い木など、それぞれ異なる材料の特徴を見極め、それを最もふさわしい場所に生かす。それぞれの木の調和のうえに家具ができあがる。

俊一さんが炉のついたテーブルを12年間試行錯誤の後に完成させた。重厚な色合いのタモの天然木を使った民芸調家具で当然、日本間にピッタリだが、収納箱の上に重ね脚を高くして、オプションのイスを付ければ洋間にも合う。大ヒット作で定番商品となった。孝司さんはこの座卓の改良を考えている。父親が長い年月、悪戦苦闘して作り上げただけに、孝司さんにとっては容易なことではない。
(文・安藤憲孝)

  • お問い合わせ

    株式会社鴛海織物工場
    TEL:0944-87-7322
    TEL:0944-87-0503
  • お知らせ

    木と土にたずさわる三人展
    2008年2月25日(月)〜3月2日(日)
    家具・建具・美濃焼のコラボレーションにより、遊び心に満ちたなごみの空間を再現。
    約300点の作品を展示し、古賀さんからは家具選びのアドバイスも聞けます。

  • 絵・文  あんどう・のりたか
    年甲斐もなく好奇心が強い。無論、全てにそうではないが、特にモノ作りの現場でいつの間にか身を乗り出している。創造の世界が新鮮に映る。衰えそうもない好奇心に当分、付き合っていくか…
古賀 孝司さん(37歳)
▲古賀 孝司さん(37歳)
木精舎の民芸家具
▲木精舎の民芸家具