第13回 ちりめん細工・創作人形 — 時を重ねた古布の風合いにひかれて - 匠にであう - アクロス福岡
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第13回 ちりめん細工・創作人形 — 時を重ねた古布の風合いにひかれて

小さな布に綿を含ませて仕上げる押し絵
▲小さな布に綿を含ませて仕上げる押し絵
江戸時代からの歴史をもつ伝統手芸、ちりめん細工。古布を接ぎ合わせて作る花や鳥、人形などの愛らしい作品は、見る人を和ませ、ここ数年、その人気は高まりをみせている。今回訪ねたのは「ちりめん細工・創作人形」づくりの匠。ちりめん細工と創作人形が出会うことで、作品の幅をよりいっそう広げている。

福岡市中央区でアトリエ「雅夢[がむ]」を主宰する、ちりめん細工・創作人形作家の梅木雅子さん。ちりめん細工との出会いは約20年前。趣味で骨董屋巡りをしていたとき、年代物の古布を手にしたのがきっかけだった。

「時代を重ねた布には、現代のものが持ち得ない魅力があります。この独特の風合いに強くひかれました」

梅木さんは明治、大正などの古布を使って、ちりめん細工や押絵などを作る。モチーフは日本の四季を中心としているが、その原点は30代半ばに趣味で始めた、紙粘土人形にさかのぼる。そのうち動く人形が作りたくなり、本格的にデッサンを学んだ。すると今度はきれいな着物が着せたくなった。こうした探求心や向上心によって、創作人形とちりめん細工という梅木さん独特の創作スタイルが完成。作品の幅はグッと広がった。

アトリエを訪ねたとき、20年かけて集めたという古布が、タンスの中に大切にしまわれていた。昔は反物で買えたそうなのだが、近年のブームを受け、今ではなかなか手に入らないとか。端切れを広げてみると、あちこちにハサミを入れた跡があり、柄をていねいに切り取っては、余すところなく大切に使いきる様子がうかがえた。

親子二人三脚の創作活動

梅木作品の特徴は、周りが華やぐ明るさにある。互いの色はそれほど派手でなくても、組み合わせの妙によって、モダンな華やかさが生まれるから不思議だ。少女時代、和裁が得意だった母親の影響で、色とりどりの布や糸に囲まれて育った。色彩感覚はそのときの賜物だとか。父親は指物師。ものづくりを愛する血筋である。

10年ほど前から、梅木さんには心強いパートナーができた。長男の千春さんである。一昨年から「親子展」を開催、アトリエで教室も開くなど、二人三脚で精力的に創作活動に励んでいる。雅子さんが全体の構想と仕上げ、千春さんは土台となる人形などのパーツづくりを担当。ていねいな作りと細部まで美しい仕上がりに定評があるが「今は技術の習得が楽しい。さらに高みを目指したい」と、千春さん。一つの作品の中に互いの持ち味がいい形で生かされているという。

「古布にこだわって日本の四季を表現し、見る人が笑顔になるような作品を作りたい。目標は80歳まで現役でいること。ものづくりに携わっていたいんです」と梅木さん。創作意欲はますます盛んである。
(文・井上範子)

  • お問い合わせ

    アトリエ「雅夢[がむ]」
    TEL:092-712-0454
  • お知らせ

    アトリエ「雅夢」和布に魅せられて…
    2008年4月28日(月)〜5月4日(日・祝)
    ちりめん細工や押絵など、約80点を展示。
    端午の節句を中心に、日本の四季折々をさまざまな作風で表現しています。
    実演や体験(有料)なども行われます。

  • 絵・文  いのうえ・のりこ
    知っているようで、まだまだ知らない、わが町福岡。キラリと光る郷土の技もその一つ。
    この新鮮な感動を毎号皆さんにお届けします。今日は一体、どんな匠に出会えるのかな?
梅木 雅子さん(63歳)
▲梅木 雅子さん(63歳)
今回の作品展に出品される鯉のぼり
▲今回の作品展に出品される鯉のぼり
長男・千春さん(左)と二人三脚で創作
▲長男・千春さん(左)と二人三脚で創作