八女福島伝統的建造物群保存地区
―八女市―
福岡県内の魅力的な建物を巡る「ふくおか建物紀行」は、多くの町家が残る八女福島から始めたい。
県南の八女市福島は城下町に起源を持つ商家町で、地元では居蔵造りと呼ばれる土蔵造りの町家や、レトロな洋風建築が残っている。「横町町家交流館」から「福島八幡宮」界隈では、立派に修復された大きな商家が軒を連ねその光景は圧巻だ。
タイムスリップしたような大小様々の町家を眺めながら西へ行くと、明治41年建設の「堺屋」の離れがあり内部まで見学できる。折上げられた天井や繊細な櫛の歯状の細工をほどこした欄間、折鶴の釘隠し*など全国に名をはせる仏壇職人の技が随処にうかがえる。庭に面した桜板の縁側に座れば、「キン」と響く澄んだ水琴窟の音色が町の喧噪を忘れさせてくれる。
すぐ近くの居蔵造り発祥の家と言われる今里家は、壁全面に白漆喰を塗り、屋根は竹や杉皮の上に土をのせ瓦を葺いている。立派な彫物が格式を感じさせる江戸期の寺社も多く残り、地元の熱心な保存運動のおかげで見事に蘇った町並みは全国からも注目されている。
2月から3月にかけて、町家を開放しお雛様を展示する「八女ぼんぼりまつり」や秋の「八女福島燈籠人形」の華麗なからくり芝居も見逃せない。八女名産のお茶、おいしい地酒とあいまってぜひとも訪れたい町である。
写真・文|大森久司
-
場所・お問い合わせ
八女市本町一帯アクセス
八女市観光協会 TEL:0943-22-6644
※ボランティアガイド有り西鉄バス:「福島」下車
堀川バス:「八女学院前」下車
▲諸富家ひさしの持送り部分
(梁の根元の板状の支え)
▲今里家(左)と東古松町通り
▲八女福島燈籠人形
(重要無形文化財)
▲堺屋手水鉢
(下が水琴窟)