筑後川昇開橋 ―大川市―
昇開橋を訪れた日は快晴ではあったが、風が強く、川は波立ち、小さな船がふらふら揺れていた。赤い鉄塔は、広い川面に巨大な門番のように凛として直立していた。
江戸中期から戦前まで、筑後大川は県南の重要な集散地で若津港から大阪方面へ物資を運び大いに栄えていた。昭和10年に開業した国鉄佐賀線は佐賀と瀬高を結んでいたのだが、筑後川に架ける鉄橋が問題であった。隣接する若津港に入る大型船を通すため、長さ24メートルもの橋桁を、23メートルの高さまで持ち上げる必要があったのだ。重さ48トンの鉄橋が30メートルの鉄塔にそって上下する構造は実に精緻にできていて、この形式の構造は当時東洋一といわれた。
設計は鉄道省の技官たちが自らおこない、精巧模型がパリ万博にも展示された。海抜35メートルの高所で900度まで加熱したリベット*(写真▲2)を何万本も叩きこむ作業は、現在門柱だけが残る若津鉄工所が担当したのだろうか。廃線になる時に解体の話もあったが、地元の強い要望で産業遺産として残ることになった。
現在は、橋もとの鉄工所跡には温泉ができていてゆっくりくつろげる。小保榎津の町並みや旧三潴銀行本店もすぐ近くなので、家具はもちろん、昭和の遺産が残る大川の魅力をぜひ堪能してもらいたい。
*リベット… 鉄板を重ねて接続する金属棒で赤く熱して柔らかくして穴に入れ頭を叩いて固定する。鉄の構築物に使用されたが職人技を必要としたが、現在はほとんど使用されていない。
※4月20日現在可動休止中。
詳細は、上記お問い合わせ先か、筑後川昇開橋公式ホームページ(http://www.shoukaikyou.com)でご確認ください。
写真・文|大森久司
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場所・お問い合わせ
アクセス
西鉄バス:「大川橋」下車徒歩10分備考
佐賀市営バス:「昇開橋」下車徒歩5分見学無料
休:月曜日(祝日の場合は翌日)
▲2 リベット使用部
▲3 トラスト交点部
▲4 旧三潴銀行本店