JR門司港駅 ―北九州市― - ふくおか建物紀行 - アクロス福岡
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JR門司港駅 ―北九州市―

JR門司港駅
JR門司港駅

駅が近づくと列車は早めに速度を落とし、ゆっくりと慎重に止まった。終着駅の高揚感と哀愁を感じさせるホームに降りると古風な制服を着た駅員さんがにこやかに迎えてくれた。JR門司港駅はまるで大正時代にタイムスリップしたようだ。

明治維新後、日本は西洋を手本として富国強兵策を取った。鉄道敷設は重要で、早くも明治24年には門司港を起点に熊本県玉名までを開通させた。日露戦争後、門司港駅は大陸の玄関口となり大正3年にネオルネサンス様式の駅舎が完成した。

外観は気取った帽子をかぶった紳士風だが長大なポーチが四周を囲み安定感のある懐の深さを感じる。銅板の屋根もお洒落だが鉄骨部分が実に繊細で、コリント様式*1の柱頭(写真▲1)まで鉄を溶接して造っている。鋼管細柱に樋を埋め込むなど難しい技も随処に見て取れる。格天井が流動感を与えるホール(写真▲2)の2本の円柱(写真▲3)はドリス様式*2で礎石は真鍮で美しく装飾されている。水除けや棚に上質の白大理石を使った洗面所は設計者のセンスが感じられるし、アカンサスの飾で支えられた真鍮製の大水盤(写真▲4)は非常に珍しい。二階展示室には屋根をかたどった立派な装飾つきドア(写真▲5)があり往時の写真が陳列されて見学できる。

多くの出発と別れを見てきた終着駅だが、今は門司三井倶楽部や九州鉄道記念館(写真▲6)なども含めた門司港レトロ地区の起点となっている。


*1 コリント様式・・・古代ギリシャ建築様式のひとつで、アカンサス(アザミの葉に似た形)と呼ばれる葉を飾った華麗な柱頭が特徴。

*2 ドリス様式・・・アテネのパルテノン神殿などに使われている古代ギリシャ建築様式で、他の様式よりやや古い。装飾がほとんどない円形の柱頭が特徴。

写真・文|大森久司

  • 場所・お問い合わせ
    福岡県北九州市門司区西海岸1-5-31
    門司港駅観光案内所 
    TEL:093-321-6110
    ※北九州市観光案内ボランティアのお問い合わせ
    北九州市観光情報コーナー 
    TEL:093-541-4189
    アクセス
    JR門司港駅 0分
    備考
    二階展示室 9:00~18:00 無料
コリント様式の柱頭
▲1 コリント様式の柱頭
流動感を与えるホール
▲2 流動感を与えるホール
ホールの円柱
▲3 ホールの円柱
真鍮製の大水盤
▲4 真鍮製の大水盤
装飾つきドア
▲5 装飾つきドア
九州鉄道記念館
▲6 九州鉄道記念館