旧門司三井倶楽部 ―北九州市―
門司港レトロ地区は明治から戦前にかけて造られた洋風建築が軒を連ねているが、その中心に旧門司三井倶楽部はある。ハーフティンバー*1の木造2階建で、ドイツの小さい館を模し社交場として大正10年に完成した。今は結婚式や小コンサート会場として開放されているが、かつては貴賓の宿舎にも利用された。アインシュタインが滞在した2階の部屋(写真▲1)はアールデコの寝具なども含め当時のままに復元されている。
嘉穂高校(飯塚市)出身の松田順吉が設計監理を行ったが、道を挟んで立つ旧三井物産門司支店は弟・軍平の設計だ。父・武一郎は東大出身の鉱山技師で筑豊炭田の近代化に尽力したことで有名だが、息子たちには建築を志すよう諭したという。順吉は、門司と福岡に事務所を開き九州の建築家の草分けとして活躍し、弟は、アメリカの名門コーネル大学建築学科を首席で卒業し日本で十指に入る設計事務所を創設した。
外観は豪快だが内部空間は繊細なインテリアで満たされている。階段手すり(写真▲2)はリブを多く使ったアールデコ*2の見事な彫りが施され、暖炉(写真▲3)はアールデコと古典的デザインが混在する。天井漆喰飾り(写真▲4)は重厚なものや直線的なものなどバラエティ豊かだ。帆船がデザインされたエントランス上部のステンドグラス(写真▲5)は設計者の驕らない気品を感じさせてくれるなどいずれも見ていて飽きない。
1階レストランの海鮮料理もおいしいし、船溜り周辺の門司港レトロ地区(写真▲6)を散策するのも楽しい。
*1 ハーフティンバー・・・梁や柱、筋違などの木部を外観に表す西洋木造建築工法。北ヨーロッパに多く見られる。
*2 アールデコ・・・1910年から1930年にかけて流行したデザイン様式でアールヌーボーが植物を模したデザインに対し幾何学を使ったデザイン形式。
-
場所・お問い合わせ
北九州市門司区港町7-1アクセス
TEL:093-321-4151JR門司港駅より徒歩3分備考営業時間:9時~17時 年中無休
料金:2階見学は有料(大人100円、
小中学生50円)
▲1 アインシュタインが滞在した部屋
▲2 階段手すり
▲3 暖炉
▲4 天井漆喰飾り
▲5 ステンドグラス
▲6 門司港レトロ地区