風浪宮本殿 ―大川市―
「おふろうさん」として親しまれる大川市の風浪宮は神功(じんぐう)皇后と海神安曇磯良(あずみいそら)(写真▲2)伝説に由来する由緒深い神社である。筑後川の河口ではあるが、微高地(びこうち)で昭和28年の大水害にも浸水せず、炊き出しを行ったと宮司の安曇氏から伺った。
本殿は戦国期に筑紫一帯を治めた蒲池鑑盛(かまちあきもり)が1560年に再建したと伝わっている。回廊に囲まれた本殿は正面三間、奥行き二間に向拝(こうはい)*1のある切妻(きりづま)造りで欄干付きの縁が四周に廻っている。亀腹(かめばら)*2は時代が下るのだろうか大きな御影石を据えてある。丸柱や梁は高さに比べてがっしりし、構造的な安定感があるが、妻や軒の出は非常に深く檜皮葺(ひわだぶき)*3屋根(写真▲3)がまるで空中に飛び立ちそうな勢いだ。二重の垂木は小口を飾金物で装飾しているが無駄な組物がなく戦国初期の気風を漂わせている。江戸時代に造られた拝殿と回廊に囲われた調和のある景観(写真▲1)が美しい。
境内には樹齢二千年とも言われる大楠(写真▲4)、正平十年(1355年)の銘が入った五重塔(写真▲5・重要文化財)などがある。外苑の大川公園(写真▲6)の奥に弥生時代の貝塚跡もあり、神話時代から現代までが凝縮された神域を形成している。
鑑盛は人情に厚く、しかも勇敢な戦国武将で本家は滅びたものの多くの子孫が立花家の重臣などとして残っている。毎年2月8日に開かれる大祭「裸ん行*4」は大川の人々の「おふろうさん」への熱い思いが伝わる。
*1 向拝・・・屋根を張り出し参拝者の礼拝する所。
*2 亀腹・・・建築物の基礎部分を、白漆喰などで固めて丸く造ったもの。
*3 檜皮葺・・・桧の皮を竹の釘で重ね貼りした屋根。
*4 裸ん行・・・毎年2月9日~11日に開催される筑後三大祭「風浪宮大祭」の前夜祭。
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場所・お問い合わせ
福岡県大川市大字酒見726-1アクセス
風浪宮 TEL:0944-87-2154西鉄バス「中原高木病院前」下車 徒歩10分(西鉄柳川駅より)備考年中無休
▲2 海神安曇磯良
▲3 檜皮葺屋根
▲4 大楠
▲5 五重塔
▲6 外苑の大川公園