黒木町黒木伝統的建造物群保存地区 ―八女市黒木町―
昨年7月の豪雨では多くの被害を受けた黒木町だが、古い町家や酒蔵のある黒木町黒木伝統的建造物群保存地区は被害が少なかった。矢部川の水を利用した多くの水路が町中にある(写真▲1)が以前と変わらぬ流れが心和ませる。夏は暑く冬は底冷えする盆地式の気候だが、米や果物は甘みが豊かで上質な八女茶の産地だ。
町は東に位置する黒木氏の猫尾城の城下を起原とし、江戸期には現在の町が構成された。国道沿いに、明治14年に竣工した松木家(写真▲2)が修復を終えて開放されている。高さ10mを超える2階建ての大きな町家で、間口の大きい店に入ると分厚い松板の根太天井*1が広がり、2階に上がれば大梁が井桁に重ねられ小屋裏(写真▲3)が非常に高い。豊富な木材の産地であったればこそできた大型の木造建築だ。漆器など多くの調度品(写真▲4)は当時の豊かさを物語っている。青石と呼ばれる人の背丈にもなるような大きな腰石もその豊かさの象徴だったのだろうか。
町並みを南に抜けたところに流れる矢部川では、江戸時代にできた大きな堰から水を引いている様子(写真▲5)が見て取れる。また、今では珍しい木造の南仙橋は昨年の水害で流されてしまったが、町並みと調和した景観が復元されればと願っている。
4月は境内を覆いつくさんばかりの大藤*2(天然記念物)見物(写真▲6)で賑わう黒木だが裏通りにも足を延ばせば心地よい町歩きが楽しめる。
*1 根太天井・・・木造の天井形式。2階床を1階天井とし角材を渡して厚板を張ったものが直接見える。
*2 八女黒木大藤まつり・・・毎年4月中旬~5月初旬ごろ。
写真・文|大森久司
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場所・お問い合わせ
八女市黒木町黒木一帯アクセス
黒木町観光協会
TEL:0943-42-9190
営業時間:9:00~17:00
※ボランティアガイドあり堀川バス黒木下車 松木家は徒歩10分備考松木家:月曜、年始年末 休み
▲1 矢部川の水を利用した水路
▲2 松木家
▲3 小屋裏
写真提供:久留米工業大学 大森洋子
▲4 漆器など多くの調度品
▲5 大きな堰から水を引いている様子
▲6 大藤
(天然記念物)