高良大社 本殿・幣殿・拝殿 ―久留米市― - ふくおか建物紀行 - アクロス福岡
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ふくおか建物紀行

高良大社 本殿・幣殿・拝殿
―久留米市―

高良大社 全景
高良大社 全景

高良大社は、筑後平野ばかりか佐賀や雲仙を一望できる高良山中腹に位置する。創建は西暦400年とも伝えられ格式の高い神社である。現在の社殿は、1661年久留米藩第三代有馬頼利の命で、普請奉行丹羽頼母重次(にわたのもしげつぐ)と棟梁深谷平三郎光盛が造ったことが棟木(むなぎ)近くの墨書(ぼくしょ)に記されている。丹羽は筑後川治水で有名だが、二人は日光東照宮の造営にも参加した当時最強の技術者コンビだ。頻繁に洪水を起こす筑後川を治めるべく、その象徴として家康の東照宮と同じ権現造りの社殿を造ったのだろうか。

桧皮葺(ひわだふ)きの社殿は非常に大きく、平屋だが高さは4階建て相当の13mにも達する。反りのある入母屋(いりもや)が二棟つながり、正面に千鳥破風(ちどりはふ)と唐破風(からはふ)の向拝(こうはい)(写真▲1)をおく複雑な形を破綻なく納めた手法は見事である。廻縁(まわりえん)にも腰組と呼ばれる斗栱*1(写真▲2)が付くなど装飾的で、完成当初は派手な着彩で絢爛豪華な元禄文化を体現したはずだ。

敷地は谷を埋めた造成地で、さすがに完成300年で大きな地割れができ20cm沈下した柱もあった。一見しただけでは分からないが、昭和51年に直径40cm長さ9mの鋼管30本を打ち込み、鉄筋コンクリートで人工地盤を作りその上に既存材で以前のように修理復原された。筑後平野の繁栄の基礎を築き、大社を奉納した先人と現在の匠たちの共同作業でこの社殿は保存された。

4月下旬から5月上旬に見頃となるつつじ(写真▲3)を見ながら少し長い参道(写真▲4)を登るのも楽しい。本殿南側には久留米つつじの原木とされる小ぶりだが色鮮やかな群生地があり、境内を覆い尽くさんばかりの大樟の木陰も実に心地よい。

*1 斗栱・・・ときょう。社寺建築などで、柱や束の上部で床板や軒を支える複雑な組物、斗(ます)と肘木(ひじき)を組み合わせる。

写真・文|大森久司

  • 場所・お問い合わせ
    久留米市御井町1
    高良大社 TEL:0942-43-4893
    アクセス
    JR「久留米大学駅前」よりタクシーで約15分
    西鉄バス「御井町」下車 徒歩30分
    備考
    年中無休
千鳥破風と唐破風の向拝
▲1 千鳥破風と唐破風の向拝
斗栱
▲2 斗栱
つつじ
▲3 つつじ
参道
▲4 参道
本殿
▲5 本殿