三池炭鉱宮原坑施設
―大牟田市―
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侍の国、日本の劇的近代化は世界的にも稀有な現象であった。「明治日本の産業革命遺産九州・山口と関連地域」(三池炭鉱宮原坑ほか全28資産)がユネスコの世界遺産に推薦されることが決まったのはとても喜ばしい。明治人の努力と結束力、近代化を受け入れる教育水準の高さがあったからだろうが、明治後半にエネルギー源の石炭を確保できたことも大きな要素だ。
大牟田の三池炭鉱宮原坑(明治28年開鑿(かいさく)着手)は、良質な石炭が採れるが湧水が多く揚水の技術は不可欠であった。福岡市中央区荒戸生まれの團琢磨(だんたくま)*1の指導のもと、イギリスから当時世界最大の能力をもつポンプを導入するなどして近代炭鉱を完成させた。深度140mを超える地底に人を送り、大量の石炭や水を運び出す作業は高度な技術だ。今も残る巨大な白い櫓(やぐら)と、油で真っ黒になった巻揚(まきあ)げ機(▲1)は圧倒的な力の大きさを見せつける。直径50cmある三本の排水管が稼働すると川の水がきれいになったという。平成9年に大牟田の炭鉱は全て廃坑となったが、今も毎日地下水計測を行っている。
宮原坑のすぐ近くには重要文化財の早鐘眼鏡橋(はやがねめがねばし)(▲2)、有明海に面してはやはり遺産候補の三池港もある。開港と同時に完成した旧長崎税関三池支署(▲3)や旧三井港倶楽部(▲4)が往時のままだ。港倶楽部は船員の休憩所や政財界の迎賓館として建てられ、今は結婚式場やレストランになっている優雅で美しい建築だ。高い塔のある市役所(▲5)も帝冠様式という戦前を象徴するデザインだ。大牟田駅前のレンタサイクルで町を一周するのも楽しいだろう。
*1 團琢磨・・・黒田藩士の出身で、修猷館に学び14歳で岩倉使節団に加わる。マサチューセッツ工科大学卒業。三井財閥の総帥で昭和7年に暗殺される。
2013年9月世界遺産登録政府推薦決定
この情報は2013年12月19日現在のものです。
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場所
大牟田市宮原町1-86-3アクセスJR「大牟田」駅より西鉄バス「早鐘眼鏡橋」下車徒歩8分お問い合わせ大牟田市 世界遺産登録・文化財室 TEL:0944-41-2515見学
※レンタルサイクル
西鉄「大牟田」駅
TEL:0944-53-0071
大牟田観光プラザ
TEL:0944-43-1643(月曜定休)毎週日曜日 10:00~17:00 定期公開
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▲1 巻揚げ機
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▲2 早鐘眼鏡橋
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▲3 旧長崎税関三池支署
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▲4 旧三井港倶楽部
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▲5 高い塔のある市役所
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▲ トロッコ