かずら筆 - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
Language 検索
  • Facebook
  • Instagram
  • YouTube
  • Twitter

受け継がれる伝統

かずら筆

かずら筆
▲イラスト・有馬沙里 ▲3本セット(大・中・小)3,000円

日本の書家十傑の一人ともいわれる下枝董村。幕末から明治にかけて活躍した彼は、小笠原藩に仕えたのち、最後は緑深い自然の中で暮らしたいと終の棲家を現在の福岡県京都郡みやこ町に構えた。ここで彼が使ったのが、かずら筆だ。大胆で勇壮な彼の書は、このかずら筆と出逢うことで絶頂を極めた。

山の中で樹木に絡まるかずらを使って作る「かずら筆」。自生しているかずらを採取したら木槌で筆となる部分を何千回と叩き、手で丁寧にほぐして筆にする。手作業でしか作れないため大量生産は難しいが、独特の味を持つ書体になるとあって、全国の書家に人気だ。しかしこの芸術品とも呼べる筆を作る職人は、現在日本に一人きりとなってしまった。この地で技術を受け継ぎ、かずら筆を作り続ける柿ノ木原下枝董村会会長の村上正夫さんに話を聞いた。

「一番難しいのは、『良いかずらを見つけること』です。水分含有量が適当で、中の繊維が多いかずらがいい筆になる。昔は山から切ってきて叩いて初めて、良いかずらかそうでないかを判断していたのですが、今では山中で触るだけでわかります。まっすぐ伸びていて、繊維が詰まっているかずらを見つけられたら、あとはとにかく叩く作業ですね。右手がしびれるくらいまで、叩き続ける。経験値と辛抱強さが必要なので、なかなか若い人が育たないのが残念です。気づいたら、私が最後の職人になっていました」

植物の力を借りて作り上げる、芸術作品。文化と自然が共存して生まれるという唯一無二の芸術の火を、絶やしてはいけない。

(文・上田瑞穂)

  • 柿ノ木原下枝董村会
    福岡県京都郡みやこ町犀川木井馬場柿ノ木原
    TEL:0930-42-1242