たにし人形
タニシのふくらみのある貝殻に色をつけて、かわいらしい動物や人形の形に仕上げる「たにし人形」。その表情やぽってりとした様がなんとも愛らしいこの人形、戦後に行橋市で生まれ、今なお当地の伝統工芸品として人気を博している。
「終戦後に、集落のみんなの沈んだ気持ちを明るくしようと、一人の主婦が田んぼにあったタニシに色を付けたことから始まったと聞いています。その後、農薬の影響で田んぼのタニシは激減し、今は養殖タニシの殻を使って作っています。ですが最近また少しだけ、田んぼにタニシが戻ってきているんですよ」と話すのはたにし人形同好会の会長、鈴木一雄さん。この道15年のベテランだ。
「一つひとつ違うタニシの形状や色に合わせ、素材を損なわずに活かすよう作るのが一番難しいですね。養生時間を入れると1つ作るのに3~4日はかかりますが、やはりできたときの達成感はひとしお。手間はかかっても、誰かの家に喜んで飾っていただけると思うだけで、頑張る気力が湧いてきます」
小さなタニシの殻にハガキや紐などを使い、動物の耳や口といったパーツを作っていく作業は、目も身体も酷使するかなり細かい仕事だ。若い世代の後継者が望まれる。
「小さな貝殻が美しい飾り物に変わっていく様は、本当に面白い。ぜひ若い人たちにも興味をもっていただきたいです。また、干支人形は年末年始に行橋の正八幡宮などで販売しますが、参拝客の方にも人気です。まずは手に取って、その姿を見てみてくださいね」
毎年人気の干支人形のデザインは、5月くらいから考え始めるそう。来年の巳年デザインはまだ誌面ではお見せできないものの、試作品を拝見するととってもキュートだった。
(文・上田瑞穂)
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たにし人形同好会
行橋市中津熊345-14
TEL:0930-22-5431(鈴木さん自宅)