高取焼 - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
Language 検索
  • Facebook
  • Instagram
  • YouTube
  • Twitter

受け継がれる伝統

高取焼

高取焼
▲イラスト・有馬沙里
 ▲福岡市無形文化財 高取焼

現在、味楽窯がある土地は「早良区高取」だが、言うまでもなくこれはこの地にこの窯があったからこそ名づけられた地名。「若い方と話していると、『高取にあるから高取焼なんですか』なんて、平気で聞かれることもあるんですよ」と苦笑するのは、十五代窯元の亀井味楽(かめいみらく)さんだ。

高取焼の歴史は古い。17世紀の始め、文禄慶長の役の際に朝鮮から陶工たちが九州に渡ってきた。そのうちの一人、高取八山(パルサン)が始祖だ。黒田如水に見いだされた彼は、直方の鷹取山に窯を設け、小堀遠州の指導を受け遠州高取を完成させたと言われている。現在、味楽窯に併設されている味楽窯美術館で古高取と呼ばれる朝鮮風の作品と遠州高取の作品を同時に見ることができるが、その違いは歴然。遠州の綺麗さびの思想を受け、繊細で美しい日本の焼き物へと変わっていった様子がわかる。

高取焼は黒田藩の御用窯であったため、味楽窯は、より城に近い現在の場所にと窯を移したのが十八世紀の初頭。このころより茶道具の名品を数多く生み出している。

「高取焼の大きな特徴は七色の釉薬を用いること。加えて陶器でありながら、指で弾くと磁器のような高い音が出るんですよ。これは釉薬を重ね塗りしているにも関わらず、厚みが非常に薄いからなんです。全国の陶芸家に『高取だけは真似したくない』と言われるほど、難しい技術を要しますね」と亀井さん。なるほど、作品を手にしてみるとそのあまりの軽さに驚かされる。限りなく薄く作られた、はかなさすら秘めた特有の美しさから鑑賞陶器に思われがちだが、コーヒーやお茶をいただくと、その口当たりの良さにまた驚かされる。

「四百年続いている伝統を、次世代に継承しなくてはいけない。よく職人は見て盗め、なんて言われるけど、『伝』とは『人に云う』と書く。きちんと口で伝えていかないと、新たな世代は育たないと考えています。茶道具を通じて、広く和の精神を伝える役目を担っていきたいです」

(文・上田瑞穂)

  • 福岡市無形文化財保持者 
    高取焼十四代窯元 
    亀井味楽(かめいみらく)

    福岡市早良区高取1-26-62
    TEL:092-821-0457