甘木バタバタ - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
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受け継がれる伝統

甘木バタバタ

甘木バタバタ
▲イラスト・有馬沙里 ▲甘木バタバタ

毎年1月4日・5日に福岡県朝倉市安長寺で行われている「甘木バタバタ市」。いわゆる「でんでん太鼓」と呼ばれる玩具の表面に、かわいらしい男女の子どもの顔が描かれているものを、この地方では「バタバタ」と呼ぶ。元来は天然痘除けの玩具として販売されていたが、天然痘の心配がなくなった現代でも、子どもの無病息災を祈り毎年新年になると新調する家庭が多いという。

「豆の勢いで病気が飛び散ると信じられており、昔から子どもが元気に育つようにという祈りが込められていました。今では弾ける音の景気がいいから商売繁盛にとか、童男・童女のセットなので縁結びにいいとか、さまざまな理由で購入されているようですね」と安長寺のご住職。

歴史は古く、この祭りは千百年ほど前の平安時代から続く。秋月の手漉き和紙を用い、その年に採れた豊作の証しである大豆を使うのが習わしだったが、一つひとつ竹を輪っかにして和紙を張る、という作業は想像以上に技術を要するため、制作者は減り続けている。加えて一つ六百円と安価なこともあり、さらに職人不足は深刻だ。

「実はブータンなどでも似たような仏教玩具が確認されている、世界的に見ても非常に歴史の古い慣習なんです。それほど伝統のあるものなので、何より継続して次世代につないでいくことが使命ですね。採算は度外視して、お子さんの健康を願う親心を少しでもお手伝いし続けられたらと思っています」

(文・上田瑞穂)

  • 安長寺
    福岡県朝倉市甘木772
    TEL:0946-22-5361