柳川凧
全国の城下町においてさまざまな形で作られている凧だが、ここ柳川のものは少し面白い。なんと、伝統的な絵柄が7種類もあるのだ。これにはこの土地ならではの理由がある。
柳川藩からの参勤交代で江戸の文化が持ち込まれ、関東風のものが伝わってきたり、はたまた長崎に近いことから南蛮風の凧が生まれたりと柳川凧は多種多様な文化を受け入れてきた。その結果、一般的によく見られる武者や歌舞伎絵だけではなく多くの絵柄が生まれたという。江戸時代から続くこの伝統工芸は、マルチカルチャーを体現したひとつでもあるのだ。
明治期から大正を経て、一度は廃れたこの柳川凧を復活させたのは、市内中心部で飲食店を営む坂田信義さん。その復活を志したきっかけも面白い。
「柳川の魅力をもっと多くの観光客の皆さんに伝えたいと、25年ほど前に観光ガイドブックを発行しました。そのときに伝統工芸としての柳川凧を紹介したのですが、紹介したものの作っている人はおらず、市内で買えるところがなかったんです。だったら自分で制作しよう、と作りはじめたのがきっかけ」
7種類あるうちのひとつ、金太郎をモチーフにした金時凧が特に人気が高かったため、この絵柄を中心に作り続けた結果、現在ではお酒のラベルに使われたり、カレンダーになったりと、ふたたび柳川のシンボル的存在になっている。
「金太郎の本名は坂田金時でしょう?偶然にも私と同じ名字(笑)。私が金時凧を作るのは、運命だったのかな、と思いますね」
現在ではイラストのようにベビーカーに付ける「子守たこ」や、手持ちの凧(写真)が主流となっている。
(文・上田瑞穂)
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坂田信義
柳川市筑紫町86
TEL:0944-72-5123