博多織 INORI - 受け継がれる伝統 - アクロス福岡
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受け継がれる伝統

博多織 INORI

博多織 INORI
▲イラスト・有馬沙里
 ▲博多織 INORIシリーズ

鎌倉時代、一人の僧と博多商人が宋へと旅立ち、織物の技法を習得したのが始まりという博多織。770年を経た今、連綿と受け継がれる技術を大切にしつつも、新たな試みへのチャレンジも生まれてきている。株式会社サヌイ織物の若き当主、讃井勝彦さんが生み出したのは、障害福祉サービス事業所「工房まる」に所属するアーティストとコラボしたシリーズ「INORI」だ。

「博多織という素晴らしい文化資産を残してくれた先人たちには感謝しています。博多織に宿る精神とその技術は当然守るべきものですが、その一方で先人たちの遺産にしがみついていてはいけない。昨今の和装離れが進むこの国で、新しい博多織のファンを増やすことも重要な役割だと思い、INORIのプロジェクトを立ち上げました。これは、工房まるのアーティストが描いた絵柄を、我々が織り、パスケースやブックカバーといった個性ある商品にして世の中に出しているもの。売上の一部を環境保護団体に寄付することは、少しでも社会に貢献できる立場になりたいという想いからです。しかし、工房まるさんと組んだことには、そういった意味合いはありません。障がいを持っている人を支援するため、なんておこがましいことは考えておらず、ただ単純に味があり、楽しい絵柄だったのでご一緒することにしたんです。あくまで外注デザイナーという位置付けですね」

“INORI”というブランドネームには「命の織物」という意を込めている。モチーフにするのは、絶滅危惧種の動物たち。キーホルダーやネクタイといった商品のパッケージの中にはそれら動物たちの現状について書かれたカードを同封している。「工房まるの方に以前言われたんです。これまでは支援してもらう側だったのに、支援する側に立てたのがうれしいって。私たち伝統工芸職も同じですね。支援を受けて守ってもらうばかりでなく、こちらからも積極的に働き続けること、これが博多織にとって“次の何百年”につながると信じています」

(文・上田瑞穂)

  • 株式会社サヌイ織物
    福岡市西区小戸3-51-22
    TEL:092-883-7077