久留米絣日傘
江戸後期、井上伝によって生み出された久留米絣。高度な技術が必要とされるこの伝統工芸は、われわれの生活様式の変容とともにさらに進化を続けている。
2002年、坂田織物が生み出した、オリジナル製法の「筑後もめん」を使用した久留米日傘がグッドデザイン賞を受賞した。この日傘、樹脂加工などを施さず、織りだけで遮蔽(しゃへい)率99.3%を実現しているという。常務の坂田憲子さんにお話を聞いた。
「樹脂加工をした生地だとどうしても傘の内側に熱気がこもるんですよね。その点、絣は綿なので涼しい風を通すんです。日差しを防ぎ、風を通すというのはまさに木陰に入るイメージ。黒地だと99.3%、白地でも94.7%の遮蔽率があることを県の試験場で証明していただきました。筑後もめんは従来の久留米絣よりも立体的な文様を出せるのですが、それを応用して作った日傘は丈夫で持ちもいいと、福岡のみならず東京や大阪の皆さまにもご好評いただいています」
強度のみならず手入れも楽な久留米絣は、昔から農作業服などで愛用されてきた。しかし時代の移り変わりとともにその需要は減り続け、一説には現在はピーク時の数分の一にまで生産量が落ち込んでいるという。創業65年の坂田織物でもその変遷を肌で感じてきた。
「私が嫁いできた40年くらい前は、織っても織っても生産が間に合わないくらいでした。ファストファッション(安価で流行性の高い商品を大量販売する衣料品)が生まれ、日常的に若い方が絣を着なくなった今、どうしたらまた久留米絣を手にしてもらえるのか。考え付いた結果が、筑後もめんであり、絣日傘でありました」
先人の知恵を借り、現代の暮らしに合うものを作り続ける。伝統文化を継承することは、守るだけではなく進化させることこそが難しいのかもしれない。
(文・上田瑞穂)
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坂田織物
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