Q．最高のラヴ・コメディ「セヴィリアの理髪師」が、世界中で愛される理由はどこにあると思いますか？
まずロッシーニが書いた音楽のクオリティーの高さだと思います。絶妙な仕様で書かれた観客の心や耳に深く残る一連のアリアや二重唱によって成り立っていて、更に台本の改作の質が素晴らしく、観客は自然と〝悪者〞(バルトロ、バジリオ)に対抗する側(ロジーナ、フィガロ、伯爵)の味方となるストーリー展開です。一方はラブストーリー、もう一方は経済的利益のお話で、当時の典型的なストーリーですが、現在にも通ずる普遍的なものです。そしてその真価は、まさに最高傑作を生み出すロッシーニの才能にあります。

Q．好きなシーンや大切にしているシーンはどこですか？
もちろんフィガロが登場するシーンのカヴァティーナ(第1幕第1場)です。世界で最も有名な曲の一つであり、歴史上の偉大なバリトンによって歌われてきた一曲です。楽譜上に書かれた音を全て歌おうと思うと非常に難しいのですが、生命力と音楽が炸裂するエネルギーに満ちたアリアです。自身の利発さでこれまで支配していた上流階級を圧倒する新しいタイプの人物。正に劇中劇！天才的！

Q．フィガロってどんな人物ですか？また、ご自身と重なる部分はありますか？
フィガロは、非常に頭の良い人物です。オペラの中で絶え間なく彼の賢さを垣間見ることができます。どんな予想外の状況でも常に問題を解決する才能を持っています。身体的にも声質も快活な人物で、絶え間ないエネルギーの源です。私とフィガロの共通する点は、どんな問題に対しても高い社会的な公正意識を持って解決策を見出すことのできる鋭さと能力を備えているところではないでしょうか。

Q．どんな役も器用にこなされているオールマイティーな歌手というイメージを抱いています。ご自身で得意とされている役柄や今後チャレンジしてみたいオペラなどをお聞かせください。
この質問にお答えするのはなかなか難しいです。私が歌うどの役も毎回私の一部をなしているのです。それぞれの役に魂を込めますので、一つ選び出すなんて不公平になってしまいます。人生における時期によっても異なります。若いころはフィガロ役(もちろん現在もですが)が私の信頼できる冒険の仲間でしたし、人間として成熟してきたここ数年ではファルスタッフ役は私の感情を揺さぶり、私自身の心の奥底にある感情を注ぎこむことのできる役だと言えます。

Q．ツアー中の喉のケアはどうされてますか？
一に勉強、二に勉強、そしてさらに勉強です。とりわけ喉のコンディションはメンタルのコンディションと二人三脚です。常に足を地につけ可能な限り安静と平穏さを保つ必要があります。時が経つにつれ、自分自身で気分を安らげ、自らに起きる全てのことを楽しむことを学びました。リラックスするためによく歩きます。音楽をよく聴き(オペラはほとんど聴きません)、読書もします。

Q．今回のオペラを、そしてデ・カンディアさんの生の歌声を待ち望んでいる福岡の皆さまへメッセージをお願いいたします。
福岡の皆さんに劇場に足を運んでいただき、史上最高の音楽の大傑作を味わっていただきたいです。皆さんが楽しみ、忘れがたいひと時をお過ごしくださるよう保証いたします。
ご来場お待ちしております。唯一の夕べを送っていただけるよう全力を尽くします。