ルドルフ・ブッフビンダー ピアノリサイタル
※このイベントは終了しました。
最後の巨匠ブッフビンダーが描くベートーヴェンの宇宙
※イベントは中止になりました。
チケットの払戻しについては こちら をご覧ください。
イベント詳細
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概要
会 場 | 福岡シンフォニーホール |
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入場料 |
一 般 友の会 ※未就学のお子さまの入場はご遠慮ください。 |
曲 目 | ベートーヴェン: ピアノソナタ 第8番 ハ短調 op.13「悲愴」 ピアノソナタ 第14番 嬰ハ短調 op.27-2「月光」 ピアノソナタ 第23番 ヘ短調 op.57「熱情」 |
お問い合わせ | アクロス福岡チケットセンター |
名曲「悲愴」を聴き比べてみた
ルドルフ・ブッフビンダー
クラシック音楽に限らず、21世紀はたくさんの演奏情報に接することができる時代となった。CDだけでなく、いわゆるサブスクの広大な情報があり、そこにネット上にアップされた映像なども加わる。時代を超えた演奏比較が可能となった。
オーストリアの巨匠ブッフビンダーが取り上げるベートーヴェンの初期のピアノ・ソナタの傑作「悲愴」(第8番、作品13)は録音数も多い。ブッフビンダーの個性をより深く知るためにも、幾人かの録音を比較してみた。なるべく〈時代性〉が演奏に反映されるように、巨匠バックハウス、現在も活躍するトルコ出身のファジル・サイ、そしてブッフビンダーの演奏での聴き比べである。
最も古いのはバックハウスで1958年の録音。以前によく聴いていたものだが、あらためて今回聴いてみると、第1楽章など意外にテンポが速くて、たたみかけるような感じが強い。いわゆる巨匠然とした〈悲愴感〉はなくて、力強い感覚。記憶の中で、演奏のイメージが改変されるのはよくあることで、だからこそ古い録音も時々聴き返さなければと思う。第2楽章は旋律線よりも和声感を重視した感じで、意外に淡々と展開して行く。第3楽章は速めのテンポだが、弾き飛ばさないで、内声部も意識しつつ演奏されてゆく。20世紀前半らしい楽譜に忠実な演奏とも言えるだろう。
続いて、つい最近録音されたばかりのサイの演奏。多様な演奏解釈が出されてきた20世紀の後半から21世紀の初頭にかけての解釈を踏まえた上で、サイ自身の発見をそこに加えた演奏だ。時に左手の動きの強調、フレーズから次のフレーズへ移行する時の〈間〉の取り方、第2楽章での遅めのテンポによるカンタービレの強調など、技が豊富である。音色も美しく、ベートーヴェンの堅苦しいイメージを覆す部分も多い。新鮮な演奏である。
そしてブッフビンダーの録音。こちらは1970〜80年代にかけての全集の中に収録されているもので、比較的若い時代の録音となる。第1楽章のテンポはこの演奏が最も速く、コン・ブリオの指定が生きている感じだ。有名なグラーヴェの主題のテンポ感をたっぷりとることで、速度の対比がとても強く表現されている。第2楽章は叙情性だけに頼らない構築感を持っている。第3楽章は右手と左手のニュアンスの違いを巧みに演出している演奏で、楽譜の読みが深く、それを表現する見事なテクニックが生きている。
実演を聴く前に、こうした予習をしておくと、さらに実演が楽しくなると思う。一度、試して欲しい。
プロフィール
Rudolf Buchbinder, piano
ベートーヴェンの大家ブッフビンダーが聴かせる精神性の深淵
ルドルフ・ブッフビンダーは現代を代表する伝説的な演奏家のひとり。その演奏は、60年を超える輝かしい足跡に裏打ちされた、精神性と自発性とが融合した稀有なものである。知的な解釈と自由な音楽は、世界中で称賛されている。とりわけベートーヴェン作品の解釈は模範としての評価を確立している。世界中でベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲演奏を60回以上行っており、何十年にもわたって作品の解釈の発展に貢献してきた。また、ザルツブルク音楽祭において、ひと夏でベートーヴェンのピアノ・ソナタ全曲を演奏した初めてのピアニストでもある。その時の演奏は、DVDに収録された。
ベートーヴェン生誕250周年にあたる2019/20年のシーズンには、ウィーン楽友協会が150年の歴史上初めて、ベートーヴェンのピアノ協奏曲全曲を演奏する栄誉をブッフビンダーに与えた。この未曾有の挑戦の共演者は、ネルソンス指揮ライプツィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団、ムーティ指揮ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、バイエルン放送交響楽団、ゲルギエフ指揮ミュンヘン・フィルハーモニー管弦楽団、ティーレマン指揮シュターツカペレ・ドレスデンである。さらに、バイエルン放送交響楽団とは、ハンブルク、パリ、ルクセンブルク、そしてニューヨークへツアーを行う。
ベートーヴェンイヤーの2020年、ブッフビンダーは大きなプロジェクトを計画している。ベートーヴェンのディアベリ変奏曲へのオマージュとして、ベートーヴェンが主題に選んだディアベリのワルツによる新しい変奏曲の初演がそれである。アウエルバッハ、ディーン、細川俊夫、ヨスト、ラブマン、マヌリ、ペンデレツキ、リヒター、シチェドリン、シュタウト、譚盾、ヴィトマンといった現代作曲家たちが、このプロジェクトに携わっている。この新しいディアベリ変奏曲は、ジーメンス音楽財団の支援を受け、さまざまな主催者たちによって委嘱された。そして、この新しいディアベリ変奏曲の世界初録音をもって、ドイツ・グラモフォンと専属契約を結んだ。同時に1976年以来となるベートーヴェンのディアベリ変奏曲の録音も行う。
ブッフビンダーはウィーン・フィルハーモニー管弦楽団、ウィーン楽友協会、ウィーン交響楽団、そしてイスラエル・フィルハーモニー管弦楽団の名誉団員である。またシュターツカペレ・ドレスデンの名誉賞を授与された初めてのソリストである。
また、グラーフェネック音楽祭の芸術監督を2007年の創設以来務めており、この音楽祭をヨーロッパで最も注目される音楽祭に育て上げた。
これまでに数々の賞を受賞したCDやDVDが、膨大にリリースされており、著作として自伝「ダ・カーポ」と「私のベートーヴェン-巨匠との生涯」がある。
主催:(公財)アクロス福岡
共催:読売新聞社、福岡EU協会