チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団
※このイベントは終了しました。
アクロス開館20周年の幕開け!
さらに、伝統を重んじながらも現代的な解釈も取り入れた演奏スタイルで注目されている名ヴァイオリニスト、クレーメルが共演いたします。
イベント詳細
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アクロス開館20周年の幕開け!
概要
会 場 | 福岡シンフォニーホール |
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入場料 |
【一般価格】 GS席18,000円 S席15,000円 A席12,000円
座席配置図
B席9,000円 【友の会価格】GS席16,200円 S席13,500円 A席10,800円 B席8,100円 |
チケット |
アクロス福岡チケットセンター TEL:092-725-9112 チケットぴあ TEL:0570-02-9999(Pコード:213-766) ローソンチケット TEL:0570-000-407(Lコード:81413) |
出 演 | 指揮:デイヴィッド・ジンマン ヴァイオリン:ギドン・クレーメル |
曲 目 | R.シュトラウス:交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」op.28 モーツァルト:ヴァイオリン協奏曲 第5番 イ長調 K.219 ブラームス:交響曲 第4番 ホ短調 op.98 |
お問い合わせ | アクロス福岡チケットセンター TEL: 092-725-9112 |
プロフィール
ニューヨーク生まれ。タングルウッド音楽センターにて指揮の勉強をしている時に往年の大指揮者、ピエール・モントゥーに注目され、彼にロンドン交響楽団とオランダ音楽祭への出演、という大役を任された。
彼はこれまでオランダ室内管、ロチェスター・フィル、ロッテルダム・フィルなどの首席指揮者を務めたが、特にボルチモア交響楽団は彼の指導の下、アメリカの最も重要なオーケストラの一つとして成長した。また、ボストン響、クリーヴランド管、フィラデルフィア管、ニューヨーク・フィル、ベルリン・フィル、アムステルダム・コンセルトヘボウ管、ロンドン・フィル、ミュンヘン・フィル、バイエルン放送響など世界一流のオーケストラから客演指揮者として招かれている。
1995年からはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の首席指揮者に就任。以来数多くのCD制作とともに、大成功だったヨーロッパ、アメリカ、アジアへのツアーなどオーケストラの国際的な評価を一気に高めた。CDの中では特に世界的なヒットとなったベートーヴェンの交響曲全集に対して1999年ドイツ・レコード批評家賞を受賞した。また2000年にはフランス政府より芸術文芸シュヴァリエ勲章を授与され、02年にはチューリッヒ市の芸術賞に輝いた。
7才でリガの音楽学校に入学。16才でラトビア国内の音楽コンクールにおいて優勝を果たし、その2年後にはモスクワ音楽院でダヴィド・オイストラフに師事。1967年にエリザベート王妃国際コンクールに入賞すると、69年にはパガニーニ国際コンクール、70年にはチャイコフスキー国際コンクールにて相次いで第1位の栄光を獲得した。
これまでに多くの世界のメジャー・オーケストラや指揮者と共演。演奏のレパートリーも多様であり、クラシック・スタンダードはもとより、ヘンツェ、ベルクやシュトックハウゼンといった20世紀の大作曲家の作品にも取り組んでいる。またシュニトケ、ペルト、カンチェリ、グバイドゥーリナ、バレンティン、ジョン・アダムズ、アストル・ピアソラなど、まだ世間にはあまり注目されていなかった作曲家も含め、伝統を重んじながらも現代的な解釈も取り入れた演奏スタイルで、数々の知られざる名曲を紹介してきた。レコーディングの数でも突出しており、フランス・ディスク大賞、ドイツ・レコード大賞、エルンスト・フォン・シーメンス音楽賞などの国際的な音楽賞を多く授与されている。
1997年バルト三国から有能な若い音楽家の育成を目的とし、クレメラータ・バルティカ室内楽団を設立した。以来楽団とともに世界のあらゆる地域でツアーを行っている。ヴァイオリンは1641年製の「ニコラ・アマティ」を愛用。
チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団は1868年に創設され、特に1895年に世界でもベストともいわれる音響効果を誇る新ホール(Tonhalle)が誕生してからはスイスのドイツ語文化圏の音楽界で重要な役割を果たしてきた。ハンス・ロスバウト、ルドルフ・ケンペ、ゲルト・アルブレヒト、クリストフ・エッシェンバッハなどの主要な首席指揮者たちは楽団に決定的な影響を及ぼし、また錚々たる客演指揮者たち(古くはベーム、フルトベングラー、クレンペラー、クーベリック、シューリヒト、ワルターなど、最近ではブリュッヘン、デュトワ、ハイティンク、ヤノフスキ、ヤンソンス、ロジェストヴェンスキーなど)も楽団を大いに発展させた。
現在トーンハレで1シーズンに50種類のプログラムでおよそ100回の演奏会をこなしているが、スイス国内だけでなくヨーロッパ、アメリカ、アジアなどへの演奏旅行、また最近ではデイヴィッド・ジンマンとのR.シュトラウスの管弦楽全集やシューマン、シューベルト、ブラームス、マーラー等続々と交響曲全集を録音し世界的に批評家や音楽愛好家から絶賛を浴びている。
コンサートマスター アンドレアス・ヤンケ氏 インタビュー
<Andreas Janke プロフィール>
1983年ミュンヘン生まれ。3歳からヴァイオリンを始める。エリザベート王妃国際音楽コンクール等数々の有名な国際コンクールにて入賞。現在、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団第一コンサートマスター。
---今回の来日ツアーは、黄金のコンビと言われるマエストロ、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の最後の日本公演となります。まずは“最後の公演”としての感慨や抱負をお聞かせください。
ジンマンと私たちオーケストラを温かく迎えてくださる日本には大変好感をもっておりまして、トーンハレ管弦楽団が行うツアーの訪問先でも特に楽しみにしている国の一つです。実際、オーケストラメンバーの多くは、日本の文化、特に日本食が好きで、それゆえに日本での公演を大変心待ちにしています。これまで日本で行った数々の公演では素晴らしい思い出がありますので、ジンマンとの最後の公演も、お客さまとメンバーの双方にとって、再び素晴らしい思い出となるよう頑張ります。
---ジンマンに対する印象をお聞かせください。また、“黄金のコンビ”といわれる所以はどんなところにあるとお考えですか?
“黄金のコンビ”というのは、ジンマンとトーンハレ管弦楽団の努力のたまものであり、その結果、オーケストラは新しい時代を迎え、世界でも指折りの地位を築いた楽団へと成長したのです。
また、二十年間も音楽監督とオーケストラとの関係が続くことは最近ではなかなかありません。これはジンマンが音楽を作る際やそれ以外でも、オーケストラに対して尊敬の念や愛情を抱いていることがベースにあるのは確かです。
---今回の公演のプログラムについてお聞きします。R.シュトラウスの交響詩「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」とブラームスの交響曲 第四番はトーンハレ管のレパートリーともいえる楽曲ですが、楽曲の聴きどころ、ジンマン&トーンハレ管ならではの演奏の聴きどころを教えてください。
これらの作品は全く異なる方法によってではありますが豊かな表現に満ちています。「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」は、ドイツ文学における有名な人物が題材となっています。R・シュトラウスは最もブリリアントにオーケストラの音色を組み合わせることのできるオーケストレーションの達人でした。物語のそれぞれの場面の描き方に驚かされますし、主人公ティルが様々な行為を繰り広げた末に、絞首刑に処される場面が見えてきます。また、最後は弦楽器によりティルのテーマが演奏されますが、そこでは彼の魂だけが存在し、他の登場人物がティルの気まぐれな行動を許すのです。
一方、ブラームスの交響曲 第四番は対照的で、音楽それ自体が個人的でブラームスの差し迫った感情が表現されています。その交響曲において数ある旋律の中から特別に一つを選ぶことは不可能です。しかしながら第四楽章のパッサカリアは、最も強い感情が欠如することなく確かな技法で作曲された傑作であります。ジンマンとトーンハレ管弦楽団がこれら名作をCDに収録したことからも、オーケストラにとって最も重要なレパートリーであることは確かです。
---もう一つの演奏曲、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲第五番「トルコ風」は、ギドン・クレーメルとの共演になります。(同じヴァイオリニストとして)クレーメルの印象、演奏の聴きどころを教えてください。
私がまだ学生時代に、クレーメルは素晴らしいテクニックをもった、まさしく革新的な演奏家として知られていました。私はこれまで同じ舞台に立つ機会がなかったため、彼との音楽づくりを大変心待ちにしています。モーツァルトのヴァイオリン協奏曲 第五番で最も注目されるのは第三楽章におけるトルコ風の部分で、弦楽器に“コル・レーニュ”という弓の毛ではなく木の部分で叩く特殊奏法が用いられ、特別な響きが作られます。この特殊効果はモーツァルトの時代には革新的でこの協奏曲の名前のきっかけとなったのです。
---ヤンケさんは若くして、この世界的なオーケストラで第一コンサートマスターを務められていますが、その役割についてどのようにお考えでしょうか? また、コンサートマスターとしての喜びやご苦労についてお話しいただけますか?
オーケストラを立たせたり、オーケストラにチューニングのサインを送ったり、指揮者と握手をしたりする他にも、オーケストラと指揮者をつなぐ役割があると認識しています。アンサンブルの責任ある立場として指揮者の意図していることを理解し、オーケストラに伝えることも仕事です。オーケストラには様々な性格の人がいて、そのほとんどが強い個性の持ち主であるため、音楽に関わる意見や感情をまとめて共通点を見い出すことが難しいことがあります。その一方で、音楽的に極めて水準が高く非常に親しみのある雰囲気をもち、メンバーが互いに尊敬しあうオーケストラの中で演奏できることは大変恵まれていると思います。
オーケストラの演奏には、ソリストが味わうことのできない一体感を得る瞬間が存在するのです。
---ヤンケさんはお母さまが日本人(ピアニスト)ですが、日本文化などから影響を受けていることはありますか? 来日された経験や日本との関わりがあれば教えてください。また、日本に対する印象は?
母は、家では私と兄弟には日本語のみを話していたため、そんな環境の中で育った私は日本の文化にとても親しみを感じています。私たちはまた、日本で夏期のほとんどを過ごしましたし、ミュンヘンでは学生の頃毎週日本人学校に通っていましたので、今でも日本に住んでいる日本人の知り合いがたくさんいます。子供時代に読んだ本のほとんどが日本の漫画で、野球も大好きでした。妻と私は日本と関わり続けたいがために、少なくとも一年に一度は日本に滞在するようにしていますし、私はドイツの食べ物よりも何より日本食が好きです―ライスなしでは生きていけません。
20年にわたる共同作業をしめくくる来日公演に期待する
オーケストラを聴く楽しみのひとつ、それは長く関係を続けてきた指揮者とオーケストラの熟成ぶりを体験することだと思う。
その点で、今年どうしても聴き逃せない公演がある。デイヴィッド・ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の公演だ。
アメリカで活躍していたジンマンがチューリッヒ・トーンハレ管の音楽監督となったのは1995年のことだった。それからほぼ20年間にわたって、両者は関係を深めてきた。そして今シーズンでジンマンは音楽監督を勇退する。つまり、この両者の組み合わせを日本で聴く機会は、おそらく今回の来日公演が最後となる。
前回の来日公演の時も、作品の神髄に触れる演奏で、コンサート会場の聴衆に深い感動を与えてくれたこのコンビ。これこそが一流の演奏であると、その時に実感したものだった。
デイヴィッド・ジンマンの指揮者としての魅力は、まず研究熱心であることだろう。音楽的なアイディアを練るために、作品そのものだけでなく、その音楽の背景、作曲家の人生にも関心を持ち、研究している。
ジンマンはチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団とマーラーの交響曲全集を録音したが、その時もマーラーその人だけでなく、関連する人物の手紙なども研究し、作品に込められたマーラーの意図を実現しようとしていた。取材をさせて頂いた時に、その話を聞き、「では、マーラーについて本が書けますね」と問いかけたら、「もちろん。でも、それは指揮者の仕事ではありません(笑い)」とにこやかに返してくれたジンマン。前回の来日公演の時も、ヨーヨー・マをソリストに、ショスタコーヴィチのチェロ協奏曲を演奏したのだが、ホールでのリハーサルが終わっても、楽屋でスコアを丹念に見返していたジンマンの姿が印象的だった。
その研究から生まれたのが、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団とのたくさんの録音である。まずベートーヴェンの交響曲全集で、私たちをびっくりさせた。それはベーレンライターによる新しい校訂楽譜を使用した録音だったからだ。その後も、リヒャルト・シュトラウスの管弦楽曲全集、シューベルト、シューマン、ブラームス、マーラーの交響曲全集を完成させ、さらにはベートーヴェンの協奏曲全集、モーツァルトのヴァイオリン協奏曲全集も録音した。いずれもジンマンらしい研究の跡が、その録音の中に確認できる素晴らしい仕事だった。
今回の来日公演では、ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団にとって、すでに自分たちの音楽と言っても良いほど、手の内の入っている作品を選曲している。
まず、今年生誕150周年を迎えるリヒャルト・シュトラウスの楽しい管弦楽曲「ティル・オイレンシュピーゲルの愉快ないたずら」、ギドン・クレーメルを迎えたモーツァルトの「ヴァイオリン協奏曲第5番」、そしてブラームスの交響曲第4番というラインアップである。
ドイツの古い物語をベースに書かれたシュトラウスの「ティル」は、4管編成というとても大規模な編成による管弦楽曲。いたずらな主人公ティルや様々な登場人物を管楽器が表現している。楽しい作品だけれど、オーケストラにとってはかなりテクニックを必要とする。チューリッヒ・トーンハレ管の優れた演奏能力を楽しめる作品である。
世界的なヴァイオリン奏者ギドン・クレーメルが独奏を担当するモーツァルトの協奏曲は、「トルコ風」というサブタイトルでも知られている作品。その第3楽章には、トルコの軍楽隊の行進曲のような音楽が出て来る。ヴァイオリンも弓の木の部分で弦を叩いて演奏する<コル・レーニョ>という特殊奏法が取り入れられている。クレーメルは豊かな音楽的なアイディアの持ち主で、本当に予想がつかない方向から音楽を組み立てることもある。この組み合わせでどんなモーツァルトになるのか、本当に楽しみだ。
そしてブラームスの交響曲第4番。ブラームスの最後の交響曲であり、重厚な作品だが、それぞれの楽章ごとの個性がはっきりしており、その変化が楽しめるだろう。特に第4楽章はバロック風の変奏曲を取り入れた力強いフィナーレで、オーケストラの優れた合奏能力が活かされる作品である。
ちなみに、ブラームスとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団には深い関わりがある。チューリッヒにコンサート専用会場としてトーンハレがオープンしたのは1895年のことだが、その落成記念公演でブラームスは自作を指揮している。ブラームスはそれ以前にもオーケストラに何度か客演しており、チューリッヒ・トーンハレ管弦楽団にとってブラームスはその歴史に関わりの深い作曲家なのである。その歴史もあって、今回の来日公演の最後の演目としてブラームスが選ばれたのかもしれない。
ジンマンとチューリッヒ・トーンハレ管弦楽団の演奏会は、ヨーロッパの音楽の豊かさと深さを教えてくれるもの。ぜひ、彼らの演奏を、コンサート会場で体験してほしい。
片桐卓也(音楽ライター)
アンコール曲目紹介
【1部】シルヴェストリ/セレナーデ
【2部】ブラームス/ハンガリー舞曲 第1番
スイス民謡/エヴィヴァエソチ