マーク・パドモア & ティル・フェルナー
シューベルト 歌曲集「冬の旅」
※このイベントは終了しました。
端正でノーブルな歌声、シューベルトの真髄を聴く。
歌曲において現代最高のテノール、マーク・パドモアとウィーンの俊英、ティル・フェルナーが創り出す「冬の旅」の世界を体感してください。
*パドモア&フェルナーから公演に向けての動画メッセージはこちら*
*マーク・パドモア & ティル・フェルナー インタビュー動画はこちら*
イベント詳細
※このイベントは終了しました。
端正でノーブルな歌声、シューベルトの真髄を聴く。
概要
会 場 | 福岡シンフォニーホール |
---|---|
入場料 |
【一 般】6,000円(学生券3,000円) (全席指定)
座席配置図
【友の会】5,400円(学生券2,700円) (全席指定) |
チケット |
アクロス福岡チケットセンター TEL:092-725-9112 チケットぴあ TEL:0570-02-9999(Pコード:286-447) ローソンチケット TEL:0570-000-407(Lコード:86009) |
出 演 | テノール/マーク・パドモア ピアノ/ティル・フェルナー |
曲 目 | シューベルト:歌曲集「冬の旅」D911 |
資 料 | |
お問い合わせ | アクロス福岡チケットセンター TEL:092-725-9112 |
プロフィール
ロンドン生まれ。深い洞察に富んだ解釈、確かな様式の把握、流れるような自然な歌唱は世界中で賞賛されており、リサイタル、オペラ、現代音楽の各分野で優れた才能を発揮している。とりわけJ.S.バッハのオラトリオの演奏で定評があり、エヴァンゲリストとして、ピーター・セラーズ演出による《マタイ受難曲》 《ヨハネ受難曲》(ラトル指揮ベルリン・フィル)のベルリン、ザルツブルク、ニューヨーク、ロンドン・プロムスでの公演に出演した。コンサート活動にも積極的に取り組み、これまでバイエルン放送響、ベルリン・フィル、ウィーン・フィル、ニューヨーク・フィル、ロンドン響、ロイヤル・コンセルトヘボウ管など、世界一流のオーケストラと共演。エイジ・オブ・エンライトメント管とは、共同企画としてバッハ《ヨハネ受難曲》 《マタイ受難曲》を取り上げるなど、定期的に共演を重ねている。オペラでは、ピーター・ブルック、ケイティ・ミッチェル、デボラ・ワーナーら現代屈指の演出家たちとコラボレーションを重ね、モーツァルトやブリテンほか、バロックや現代のオペラにも数多く出演。世界各地でのリサイタルも絶賛を博し、シューベルトの三大歌曲集の全曲演奏をロンドン、パリ、東京、ウィーン、ニューヨークなどで行い、ベズイデンホウト、クーパー、ドレイク、フェルナー、ルイスら優れたピアニストたちと共演している。また、バートウィッスル、ターネジ、ツェンダーといった作曲家が、パドモアのために作品を作曲している。録音も多く、代表的なものには、ハイティンク指揮の『ベートーヴェン:ミサ・ソレムニス』『ハイドン:天地創造』、ベズイテンホウトとの共演で『ベートーヴェン、ハイドン、モーツァルト:歌曲集』などがある。これらの多くはグラモフォン賞、エディソン賞、エコー賞など国際的な賞を受賞。現在、セント・エンデリオン夏音楽祭(コーンウォール)芸術監督。
ウィーン生まれ。1993年のクララ・ハスキル国際コンクールに優勝し、国際的な注目を集め、以来20年以上にわたり、世界最高峰のオーケストラとの共演や、各国の主要ホールや音楽祭への出演を待望される演奏家として活躍している。2015年12月には、ハイティンクの指揮によるモーツァルトのピアノ協奏曲第25番でベルリン・フィルへのデビューを飾り、絶賛された。ヨーロッパやアジアの主要ホールでのリサイタルや、ブロムシュテット/N響、ハイティンク/シカゴ響、マリナー/アカデミー室内管、ホーネック/マーラー・チェンバー・オーケストラとの共演も2015/16シーズンのハイライトと言える。ほかにも、アバド、アシュケナージ、ビシュコフ、ドホナーニ、アーノンクール、マッケラス、マズア、ナガノ、ノット、ペトレンコら多くの指揮者と共演。室内楽ではテノールのマーク・パドモアと定期的に活動し、2016年1月にはハンス・ツェンダーの新作を世界初演。ドイツ、東京、ソウルでもデュオ・リサイタルを行った。近年はJ.S.バッハの「平均律クラヴィーア曲集」と、ベートーヴェンのピアノ・ソナタ全32曲の演奏に力を注ぎ、2008年から2010年にかけてニューヨーク、ワシントンD.C.、東京、ロンドン、パリ、ウィーンで同ソナタの全曲演奏を行った。2017年9月には世界的なシューベルト・チクルスをスタートし、4つのプログラムを半年ごとに区切り、2年間かけて演奏する。録音ではECMレーベルから、J.S.バッハ「平均律クラヴィーア曲集第1巻」「インヴェンションとシンフォニア、フランス組曲第5番」、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第4番&第5番(共演:ケント・ナガノ指揮モントリオール響)」、ハリソン・バートウィッスルの室内楽曲をリリースしている。アルフレッド・ブレンデルに師事。チューリヒ芸術大学で後進の指導にあたる。
Q.「冬の旅」はお2人にとってどういう音楽ですか?
この曲集はとても特別で、シューベルトという作曲家の「極点」だと思いますが、そうしてその極点に立つことでこの作曲家について見えてくるものは何でしょう?
フェルナー:「冬の旅」はシューベルトの最高傑作のひとつです。演奏意欲を掻き立てられるこの作品を、私自身がファンでもあるマークと一緒に演奏できてとても幸せです。
パドモア:「冬の旅」を説明するには、シューベルトが使った3つの作曲手法についてお話しするのがいいでしょう。
1つめは、歩くように1つの音を繰り返していくこと。この手法で、人生の旅の行く末を示しているかのようです。作品全体を通してこの手法がとても効果的に使われていて、例えば「道しるべ」でもメロディーが流れる中で歌が途切れ、1音の繰り返しに引き継がれていく箇所があります。
2つめは、長調と短調の変化。例えば、短調で始まった曲が、長調で終わるという手法がこの歌曲集を通して頻繁に使われています。いくつかの曲においては、詩の一行ごとの温度変化をうまくあらわしています。
3つめは、シューベルトがこの作品においてもっとも見事に用いている空虚五度(ドミソのような三和音から真ん中の第3音を抜いた状態)です。音程の間隔の中でもっとも素朴で、感情的なものを一切脱ぎ去ったような自然な印象を与える表現です。青年の人生を見つめる上でとても重要な手法と言えます。
これらの素晴らしい手法によって、この作品はとても力強いものになっています。
Q.「冬の旅」の特徴は?フェルナーさんにとっては、それは例えばシューベルト晩年のピアノ・ソナタ群とも通じる世界だと思いますが、そのあたりもお話いただければ。
フェルナー:明らかな違いは、一緒に演奏する歌手がいるということです。
「冬の旅」で素晴らしいのは、作品全体を通して漂う陰鬱で深刻なムード。この作品と並んでシューベルトの三大歌曲集の一つに数えられる「美しき水車小屋の娘」では、物語は幸せに始まり、悲劇的な結末を迎えます。一方、「冬の旅」は最初から一貫して暗い雰囲気に包まれているのです。
また、「冬の旅」はとても長い歌曲集で、作品を通して聴くことは演奏者だけでなく、聴き手にとっても素晴らしい体験になると思います。
パドモア:シューベルトは31歳で短い生涯を閉じました。
若くして亡くなったにもかかわらず、晩年の作品、例えば最後の3つのピアノ・ソナタやピアノ三重奏曲第2番には彼の遺言のような、何かとても大切なメッセージが込められているように感じます。「冬の旅」もまさにその時期に書かれた作品なのです。
彼の音楽的な考えはすっかり成熟し、この歌曲集の中の5~6曲は超えることのできない高みに達していると言えます。
Q.「冬の旅」の中で特別な意味をもつ曲はありますか?
パドモア:この作品では、人生とは何かという問いについて、24通りの確固たる描写がなされていると思います。
「道しるべ」はその好例です。この曲では、青年が進むべき、そして引き返すことができない方向を示す道標について語ります。それはすなわち、死への道なのです。しかし、曲は感傷的にならず着々と進行し、慰めを得ようとする隙もありません。客観的に死を見つめる姿勢が貫かれているのです。
フェルナー:大好きな曲がたくさんあって、私にはとても選べません・・・。
Q.たくさんの著名な歌手とピアニストが「冬の旅」を録音していますが、それらの中に特に影響を受けたものはありますか?
パドモア:興味深いのは、この作品がバリトンやバスの歌手のものとして認知されていることです。例えば、F=ディースカウやホッターの録音が有名ですね。
しかし、これらはすべて低声用に変換されたもので、編曲によっては特にピアノにとって低すぎる音域に換えられています。
そもそもシューベルトはテノールの声で豊かに響くように作曲しており、オリジナル譜には出版されている楽譜よりも高い音で書かれているところもあります。
この曲の主人公が年老いた男性ではないというのが、一つの理由でしょう。
「霜おく頭」では青年の髪が白くなる様が語られていますが、それは雪をかぶった白さであって、雪が溶ければ元に戻ります。
この物語の主人公は青年で、彼は死があまりにも先にあり、そこに至るまでどれほど長い旅を続けなければならないのかと嘆いているのです。
ですから、シューベルトが意図したテノールの音程で聴くのが最も興味深く、作品に込められた思いに触れることができるのだと思います。
フェルナー:私もその通りだと思います。
ピアニストの視点から見ても、シューベルトが書いた音で演奏するのが一番理にかなっています。バリトンやバスが歌う「冬の旅」を聴くのも好きですが、ピアノ譜について言うと、原曲のキーで弾く方が表現しやすい。単純に音が高いからというのが理由です。
「美しき水車小屋の娘」ではこのことがより重要になります。なぜなら、ピアノが小川などの情景描写をする役割を担っているからです。
もし、原曲から3つ以上キーを下げられたら演奏が難しくなります。
パドモア:シューベルトは調性を強く意識した作曲家だと思います。
もし、彼がロ短調で曲を書いたならば、そこには特別な思いがあるのです。例えば「美しき水車小屋の娘」はロ短調で始まり、ホ長調でその旅を終えますが、この二つの調はできるだけ離れたものになっています。これはシューベルトが考え抜いたもので、バリトンが歌えるようにと安易に移調してしまうと、その違いは調性にとどまらず、曲同士の関係性も損ねてしまうのです。シューベルトの姿勢を想像すると残念なことです。
Q.パドモアさんは、美しい声を保つのに日頃心がけていることや特別なトレーニングはありますか?
パドモア:できるだけ神経質にならず普通に暮らすようにしています。
歌手にとって自分の声がどのようにはたらくかというのは、ミステリーのようなもの。湿気や特別な食事、睡眠が必要と考え過ぎるのが一番よくありません。それらが少しでも上手くいかなくなくと、歌えなくなってしまうからです。
コンサートの後にはやっぱりビールが飲みたいですし、人生を楽しまないとね。結局は、「何を」伝えるかということが、「(技術的に)どのように」伝えるかと同じくらい重要なんです。例え、声が万全の状態でない時も、自分の歌から何かを伝えたい一心でやっています。ただ単に、声が良いということ以上にね。
Q.今後取り組みたいレパートリーはありますか?
パドモア:我ながら、さまざまな分野に興味があるのをラッキーに思います。
今もバッハの受難曲やオラトリオをよく歌いますし、リート(歌曲)にも現代曲にも取り組んでいます。たくさんの作曲家が私のために曲を書いてくれているんですよ。オペラではブリテンの「ビリー・バッド」やジョージ・ベンジャミンの新作にも出演します。
リートでは、今まで取り組んできた素晴らしい作品に目を向けなおすのが素晴らしい経験になっています。ティルとはたくさんの歌曲集を探求してきましたが、取り組みたい歌はほかにいくつもあります。シューベルトは600もの歌曲を書いたのですから、この作曲家だけを取り上げるにしても一生ものです。
フェルナー:次の大きなプロジェクトでもシューベルトを取り上げます。
シューベルトの作品のみで構成する4つの異なるリサイタル・プログラムを、2年間かけて演奏するシューベルト・チクルスです。シューベルトが亡くなる前の6~7年で書いた作品が、今では彼の主要なピアノ作品に位置づけられており、それらを集めています。